@.1996 「ナガレタゴガエル卵の高校生物発生単元への教材化について」
修士論文(学芸大学修士論文)
A.1997 「ナガレタゴガエルの発生」 [生物TB(現:生物T)] (三省堂)高校生物教科書のグラビア2頁 & 教科書指導書の2頁。
B.2002 「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生態学・発生学的研究と棲息環境の保全についての研究」 (209頁) とうきゅう環境浄化財団
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/archives/g_research/秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生態学
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/wp-content/uploads/2011/04/a9526cd5b40c1d256b1f851449b25891.pdf C.2006 「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生命表の作成、及び、水位と流下行動の相関関係についての研究」 (104頁) とうきゅう環境浄化財団
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/archives/g_research/秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生命表
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/wp-content/uploads/2011/02/632ece1e52246c7e51f232724c9d37251.pdf D.2006 「ナガレタゴガエル(Rana sakuraii )の生態的特徴」と「森林伐採による同個体群への影響について」 とうきゅう財団 第12回研究助成ワークショップでの講演(渋谷国連大学内)
E.2007 「Conditions controlling the onset of breeding migration of the Japanese mountain stream frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエルにおける、早春の繁殖移動行動の開始を規定する必須3条件)
Naturwissenschaften 94 (7): 551―560. https://doi.org/10.1007/s00114-007-0226-2
F.2017 「Diel activity patterns during autumn migration to hibernation and breeding sites in a Japanese explosive breeding frog Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエルにおける、冬眠場所≒繁殖場所への[秋の回帰移動期]中における日周期行動パターン)
Herpetological Journal 27 (2): 173―180.
G.2018a 「Conditions controlling the timing of the autumn migration to hibernation sites in a Japanese headwater frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエルにおける、秋の冬眠場所への回帰移動行動の [開始規定3条件] & [完全停止条件])
Journal of Zoology 304 (1): 45―54. https://doi.org/10.1111/jzo.12495
| H.2018? 「Autumn protogyny and spring protandry: the mechanism and adaptive significance in amphibian explosive breeders」
(=両生類の早期繁殖種 [冬〜早春に短期間で産卵するタイプ]における、
【秋の Protogyny & 早春の Protandry】が連続して生じるメカニズムとその適応意義)
※動物の行動学的には、[繁殖場所への到着] or [繁殖期の出現日・時刻] の♂♀の差によって Protandry:♂が繁殖場所に早く到着 or 繁殖期に早く出現する現象; Protogyny:♀が繁殖場所に早く到着 or 繁殖期に早く出現する現象 ※植物や一部の魚類の個体群内での成長の観点からは、 Protandry: 雄性先熟=雄性生殖器官(おしべなど)が先に成熟すること; 魚類個体群で、最初は全て♂個体になり;その後、最大個体が♀になるような現象。 Protogyny: 雌性先熟=雌性生殖器官(めしべなど)が先に成熟すること; 魚類個体群で、最初は全て♀になり、〜。 ※渡り鳥;魚類の回帰移動;昆虫の繁殖期の出現、等々では、一般に Protandry であり、その適応意義には、 多くの仮説が提唱されている。 ★ 両生類の場合も、研究例は少ないが、冬〜春の繁殖期おける繁殖場所での到着or出現日は、 一般に Protandry (♂が先に出現 or 先に到着)である。
ところが、秋の冬眠場所(≒繁殖場所)への移動では、アメリカのあるイモリの研究報告
&本研究のナガレタゴガエルにおいては、Protogyny (♀が先)である。
そして、あまり知られていないが、一部のイモリ・サンショウウオ類 、
& ナガレタゴガエル等の一部のカエルは、秋に繁殖活動を開始する。 では、秋では早春とは逆に Protogyny となる理由・要因は? &適応意義は…?。
I.2018? 「Diel protandry during the beginning of the winter breeding migration in a Japanese explosive breeding frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエルの冬の繁殖活動初期における、Diel Protandry)
※Diel protandry = Daily protandry: 1日(24h)において、繁殖期に♂の方が早い時刻に出現 ⇔ Seasonal protandry:1シーズン:365日で見た場合に、♂の方が早い日に出現or到着すること。 ★ 繁殖期開始初日〜ピーク前では、1日の時刻で見た場合でも、Protandry(♂先出現)であった。 一方、繁殖期ピーク期以降では、♂♀の出現時刻に有意差は無かった。
このメカニズム;要因は何か?
J.2018? 「Population age structure: longevity, maturity age, and body sizes to ages in a Japanese headwater frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエル個体群における♂♀の年齢構成の詳細:性成熟年齢・寿命・年齢と体長)
★ これまでの【1.約1500個体の指骨切片の観察データ】;【野外での標識・再捕獲データ】から、 個体群の詳細な、♂♀それぞれの年齢構成、性成熟年齢(♂♀共に2年目)、等々を報告。
この年齢構成のデータは、個体群性比の年変動の要因を論じる上での重要な前提研究である。
K.2018? 「Unique annual fluctuation of true sex ratio in populations of a Japanese headwater frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエルにおける、真の個体群性比の独特な年変動)
L.2018? 「Factors of sex reversal in the populations of
a Japanese headwater frog, Rana sakuraii 」
(=ナガレタゴガエル個体群における、性転換の要因)
★ ナガレタゴガエルは、現在知られている世界の両生類で、唯一、ある要因(=野外自然状態で ナガレタゴガエルにだけ生じる)によって性転換が起こるため、個体群の性比が顕著に年変動する。
この要因が、やっとやっと、私の調査26年目にしてほぼ明らかになった。
M.2018? 「Unique anuran breeding behaviour: pairing during autumn migration and hibernation in a Japanese headwater frog」
(日本の源流生息カエルの独特な繁殖行動:秋の回帰移動〜冬眠期中のペアリング(抱接)行動)
更に、「秋の回帰移動における移動距離」;「早春の繁殖期における流下移動距離」;
| 「産卵場所の詳細」;「産卵時刻」; 「♀の年齢と産卵数の詳細」;「♀の年齢と卵の直径の詳細」; 「冬眠場所の詳細」;「春眠場所の詳細」; 「個体群密度・個体数の詳細と年変動」、等々、 計40本ほどのナガレタゴガエルの生態のテーマについてはデータがそろっているので、順次、公表予定?。 ★ 未解明・不明な主テーマは大きく見て以下の2つ:『夏』&『生息域』: 1.「夏: 詳細な生息場所; 夏眠について; 採食行動」 2.「生息地の北限の水系&分水嶺は? 利根川水系&信濃川水系では、ほぼ全流域・各支流で、 生息確認がされているが、阿賀野川や阿武隈川水系まで分散移動しているのか? 四国・九州には? 茨城の久慈川には?(那珂川にはいます & 千葉にはいない)」 私のナガレタゴガエル研究の主要なテーマは下記の4点(他でも記述していて重複しますが…): ★ 世界のカエルで、ナガレタゴガエルのみの、独特な生態的特徴:以下の1・2・3・4です。 これら主要4テーマについては、2017年夏現在、まだ正式に論文(英文での欧米の国際誌) としては未発表です。 1.「年間の回帰移動の詳細:世界で唯一、渓流魚の様な水底長距離移動の移動距離やルート等」 2.「抱接行動の開始 & ほとんどの♀のペアリング完了時期: 秋に抱接行動を開始し、冬眠期中 の終わりに、ほとんどの♀の抱接が完了⇒ この『開始時期』・『各時期と♀の抱接割合』、等々。 3.「抱接継続期間: 冬の繁殖期前 (秋〜冬眠期) だけでなく、早春の繁殖期 (産卵移動期) でさえ、 超長期間に及び、抱接:ペアリングが継続すること」; 4.「真の個体群性比&その年変動」& 「世界の両生類で唯一、野外で性転換が生じている要因」 ◎ 一連のナガレタゴガエルの調査研究においての財団からの助成研究について
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@.『ナガレタゴガエル卵の高校生物発生単元への教材化について』 | |
◎ 1996 3月 修士論文(学芸大学修士論文) | |
◎ 主内容: ナガレタゴガエルの『初期発生の特徴』; 『教材適正の理由』; 『産卵行動の概要』 | |
1. 『初期発生の3大特徴』: (各発生段階の胚の実体顕微鏡による写真で説明している)
★ ナガレタゴガエルの卵(胚)には、下記の3つの大きな特徴・利点があり、初期発生を観察する上で、 特に、中学や高校の生物単元における授業での観察材料として、とても好適である。 1).「直径が3.1mmほどで、とても大きく、肉眼で観察しやすい (※平均3.1mmとは、産卵直後の卵径です。同じ球形であっても、発生・卵割が進み: [胞胚期]〜[のう胚期]〜[神経胚]となるにつれ大きくなり、[神経胚後期]では、3.5-3.6mm位になります) 2).「色彩上=卵黄の比率上、[卵割の様子] が肉眼で観察しやすい。」 3).「子ガエルに変態するまで、腹部が透明で透けて見えるため、内部の臓器形成過程が観察できる (= 前肢のできる過程や、肺、胆のう、肝臓、などが観察できるのです)。」 2. 『観察用標本の作成と授業での実践』 ★ 筆者は実際に、初期胚: (@受精卵、A2細胞期、 B4細胞期、 C8細胞期、 D16細胞期、 E桑実胚期、 F胞胚期、 GHI原腸胚期、 JKLM神経胚期、 N神経胚期後期の神経管完成期の横断面) の各胚を ガラス管に入れた観察用標本を55本作製した。 ★ そして、筆者自身が、高校生物の授業でこれらの観察標本を1人1本ずつ使用し、生徒に観察・スケッチ させてきました。また、その後、この55本の受精卵〜神経胚後期までの観察標本は、東京学芸大学附属高校で、 しばらく、『生物Tの発生単元』の授業で使用されてきました。 |
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3. 『ナガレタゴガエル卵(胚)の観察用標本の教材としての適性:長所・短所の考察』
&『教材化の課題:A・B・C・D』 ★ 教材化する上で重要な観点:課題としては、 A.「教材として、相当数の捕獲をしても個体群に影響がないのか」; B.「一般の人にでも採集捕獲が可能か・ 手に入りやすいのか」; C.「発生過程の観察を学校で実施することが容易なのか」; D.「継代飼育が可能なのか」等があげられる。 ★ これらABCの問題について、ナガレタゴガエルでは、全く問題ないことを詳説している。 ⇒ A: ナガレタゴガエルは、日本のカエルで、他種のヒキガエル等に比べても、比較にならないほどの 生息数を誇ること; ⇒ B: 個体数が莫大のみならず捕獲も容易 & 東北を除く本州全域に広範囲に生息すること; ⇒ C: 秋〜冬に♂♀を数匹ずつ捕獲し、恒温器で3-4℃で冬眠をさせれば、春に自然とペアを形成し 産卵すること・・・。 ★ ただし、「Dが困難であり課題である。元々、両生類では、一般の人が、継代飼育できる種は、ほぼ いないのだが、理想としては、どの地域でもどんな人でも教材として扱えるには、Dも重要。」と報告。 |
A.『ナガレタゴガエルの発生』 | |
◎ 1997 「生物TB(現:生物T)」 (三省堂)高校生物教科書のグラビア2頁&教科書指導書の2頁 | |
◎ 上記@の修士論文の内容をふまえ、両生類の初期発生・卵割様式について、「ナガレタゴガエル卵」を用い、
高校生向けに30枚数枚の写真を使用し解説している。 → 受精卵(卵割前)、2細胞期、 4細胞期、 8細胞期、 16細胞期、 桑実胚期、胞胚期、原腸胚初期・中期・後期、 神経胚初期・中期・後期、神経胚期後期の神経管完成期の横断面、尾芽胚期、 幼生の透けた腹部から見た内部[肝臓や胆のうや腸や前肢…]、変態直後の子ガエル、…等の詳細な写真。 ◎ また、教科書指導書では、ナガレタゴガエルの生態の概要を、繁殖行動を中心に解説している。 |
B.「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの
生態学・発生学的研究と棲息環境の保全について」
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◎ 2002 (209頁) とうきゅう環境浄化財団
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/wp-content/uploads/2011/04/a9526cd5b40c1d256b1f851449b25891.pdf | |
1. 1991‐2000年度迄の調査結果: 総計約5万匹の捕獲調査から、主に「行動生態」について報告
【冬眠】の特徴; 【春眠】の特徴; 【早春の繁殖行動】の特徴:行動開始の誘発要因; 【産卵様式】;【産卵数】; 【幼生の歯式】、等々を報告。 ★ この報告書以降の調査で:総計22年間・3万匹以上の冬眠期個体の捕獲調査から、 「『主要な冬眠場所』は、一般世間の多くの書やサイトに書いてある様な場所では無いのはもちろんですが、 この2002年の報告書で記述した場所でも無いこと」 が判明しています。 けれども、このことは、極めて重要なことであり、まだ、ここでは記述しません・明かせません。 2. また、ナガレタゴガエルにおける、それまでの主要な生態面における報告=「日本カエル図鑑」の記述が、 ほぼ全て誤りであることを詳述に記述報告している。 |
C.「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生命表の作成、
及び、水位と流下行動の相関関係についての研究」
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◎ 2006 (104頁) とうきゅう環境浄化財団
https://foundation.tokyu.co.jp/enviroment/wp-content/uploads/2011/02/632ece1e52246c7e51f232724c9d37251.pdf | ||||
1.【個体群生態】:「生命表の作成」
★ 2003年度迄の調査結果・総計約8万匹の捕獲調査から、主に、下記の↓ 【体長の詳細(♂♀&年齢と体長)】;【年齢構成・寿命・性成熟年令】;【詳細な産卵数(蔵卵数)】; 【♀の年齢と産卵数&卵径】;【産卵様式の詳細】;【生存率(生残率)】、等々を報告。 また、繁殖期における水位の変化・増水による、流下移動行動との関係について言及ている。 ◎ 特に、ナガレタゴガエルの産卵は、「タゴガエル同様、『分産卵』の傾向があること」; そして、「分産卵となる主因は、【超難産】であること」、他に、 これまで調査研究報告の無かった『真の産卵数・真の卵径』、等々について詳細に報告している。 2.【行動生態】:「水位と流下移動個体数」 ★ 「[水位] と [流下移動個体数] の相関関係」の有無を統計解析できるほどの定量的なデータは、 研究助成期間中のわずか2年度では、得られなかった。 その理由は、水位の計測の難しさにあった。元々、「上流域の川や沢の水位などを要因として扱うのは、 とても困難である≒無意味であること」は、想像していた。なぜなら、同じ降雨での水量変化に対する、 『瀬での水位の変化』と『淵での水位の変化』は異なるし;更には、『沢幅の広い場所』と『沢幅の極端に 狭い場所」では、同じ水量の変化でも、水位の変化は全く異なるから。それゆえ、可能な限り適切と思える 場所:水域の底に水位計測センサーを設置して、2年度に渡り、水位のデータは取ったのであるが…。 やはり、水位と流下行動数の相関関係のデータを取るのは、少なくとも2,3年では不可能であった。 3. 2004年度以降の調査結果をふまえた、[沢の水量]・[流下移動個体数]・[流下移動距離]の関係の結論: ★ この報告書の調査時点以降の、総計、調査20年以上のデータからでは、『沢の水量(≒水位)』と 『流下移動数(=トラップで捕獲された数)』には、相関関係があることが判明している。
と考えがちかですが、逆で:「水位が低い(水量が小さい)ほど、平均流下移動距離は小さくなる」 のです。 理由は、野外での産卵期の観察&室内での産卵行動の観察から明瞭。ここでは、明かしませんが〜。
◎ [X:トラップに入る数]は、[Y:生息個体数(個体群密度)]&[Z:平均流下移動距離]で決定される・求まる。 ◎ [Z:平均流下移動距離] は、冬眠期にマークした個体が、[産卵移動期]or[春眠期]に再捕獲された時の 『再捕獲時の距離データ』から求まる。 ⇒ そして、[Z]は、その年度の天候(降雨・降雪・気温、等々)からの【水位】&【地形】 & その年度の【主要、産卵活動期間の長さ(例:数日〜3週間)】の3つの変化する要因に影響され変化する。 また、[流下移動距離]は、個体によって、とても差が大きい ⇒ [数十m〜2,3km or over] ◎ [Y:生息個体数(個体群密度)] は、冬眠期にマークした個体が、[産卵移動期] に再捕獲された時の 『再捕獲率データ』から求まる。 ⇒ そして、[Y]は、年度により、それほど大きくは変化しない。 が、この30年近い調査で、[Y]:生息個体数に著しく影響を与える「特殊な要因」が判明した。 もちろん、単純な要因:『猛暑』;『大雪』;『台風』;『森林伐採』などではありません。今は明かせません。
設置し、ほぼ全数を捕獲する場合は、[トラップでの捕獲数の増減]=[生息個体数の増減:年度変化]です。 ※ ナガレタゴの行動が特異なため、渡り鳥・サケ・他の種のカエル等のトラップデータとは異なるのです。 ◆ 今後、調査をしようとする方へ: 「トラップ捕獲数の年度変化・増減が、生息個体数の変化を示している」 などと、偏見・固定観念から、偽り報告を しないで下さいね! (日本の両生類の学会では、こんな虚偽報告でも、審査が通ってしまうのだから) C.『生息個体数(個体群密度)』の推定は、[長距離に渡る均一な大量捕獲]による、捕獲個体の [マーク・再捕獲法]による [再捕獲率] からでないとわかりませんよ! ◆ その場合、[1]. 「調査捕獲区間を、少なくとも平均移動距離の2倍前後≒約1500mに設定」 して、 [2]. 「地域による偏った捕獲をせず、どの流域も均一に・まんべんなく捕獲」し、 [3]. 「最低でも、1000m当たり1000匹位は捕獲・マーク」 しないと、個体数の推定は、統計学的に不可能です。 ◆ なぜならば、ナガレタゴガエルの下記の3つ:『生息地』・『移動距離』・『生息数』の特性: <1>『同一個体群の生息域が超広範囲』 <2>『平均流下距離が超長距離で、かつ、流下移動距離が個体によって短〜長と様々』 <3>『生息個体数が莫大で、かつ、長距離に渡る、平均的に大きな個体群密度』、 のために、ナガレタゴガエル個体群では、「[マーク個体を捕獲&リリースした流域]の外(=上流)から 個体が大量に移動・移入してくる」 & 「マーク個体も外部(=下流)へ流出する」ので、基本的には、 短距離区間の流域での[マーク・再捕獲法] は、全く、不適切なのです。 それゆえ、上記の様な[長距離の調査区間を設定]し、かつ、[大量捕獲・マーク]しないとならないのです。 ◆ &上記[3].の理由は、「私が、毎年、沢の流域 1500m ほどで1500-2000匹を捕獲・マークしても、 産卵移動期での再捕獲率は、毎年、たった10%前後」だからです。 ◆ つまり、「冬眠期に、400- 500m 位の流域で、200- 300匹程度の捕獲・マーク」 では、 「マーク・再捕獲法による個体数(個体群密度)の推定」は、科学的・統計学的に全く不適切」なのです! (⇒ おそらく、この程度の範囲で、この程度の捕獲・マークならば、再捕獲率は、せいぜい1%位ですから!) ★ ちなみに、20数年の調査から、調査地の生息流域:小坂志川(約12km強)・矢沢(7,8kmほど)における、 個体数(個体群密度)は、興味深いことに、両沢とも、ほぼ同じで、約[1万匹/沢の流域1千m] です。 D.いずれにせよ、[X:トラップに入る数(=捕獲数)]だけでは、[Y:生息個体数]の推定は全くできないのです! E.&、[Y:生息個体数]のみならず、[Z:平均流下移動距離]も、[大量のマーク&再捕獲]でないと推定不可能! |
D.「ナガレタゴガエル(Rana sakuraii )の生態的特徴」 と
「森林伐採による同個体群への影響について」
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◎2006 とうきゅう財団 第12回研究助成ワークショップでの講演(渋谷国連大学内) | |
◎「ナガレタゴガエルに関して、一般世間で誤解されている・間違った内容で流れている主内容」;
◎「筆者の調査地:小坂志川・矢沢の上流のごく一部のみが、モザイク状に東京都の自然環境保全地域で、 本来、流域全域を保全地域にする予定が、極々一部のみになった背景」; ⇒ 当時は、地元の森林所有者の反対で、予定の杉林を中心にした土地の、都による買い取りができなかた。 ⇒ 現在は、状況が逆転して、地元の一部の森林所有者は、東京都に売却を望んでいるにも関わらす、 都が予算の都合上、買い取りを拒んでいる。 ◎「2005年度までの約15年間での、調査地での、ナガレタゴガエルの個体数(個体群密度)の変動」 そして、「1998年度〜の小坂志川での森林伐採・林道造成の影響の有無の推測」について; ◎「ナガレタゴガエルの年間での回帰移動の概要」; ◎「脊椎動物としては、ナガレタゴガエル(両生類)・カワネズミ(哺乳類)・カジカ(渓流底生魚)が、 遊泳魚: イワナ・ヤマメ・アユ等よりも、 本州の低山地源流域生態系の最重要な [指標動物] である」 等々、について報告した上で、 ★「[東京都の自然環境保全地域]を当初の計画通り、小坂志川・矢沢の中流域の山間部に拡大すべき」と主張した。 |
E.「Conditions controlling the onset of breeding migration of
the Japanese mountain stream frog, Rana sakuraii 」
◎2007 Naturwissenschaften 94 (7): 551―560. https://doi.org/10.1007/s00114-007-0226-2 | |
◎ 主記載内容: 『世界の温帯地域における早期繁殖種(冬〜早春に繁殖)のカエルにおける、
共通した繁殖行動誘発の3条件』を初めて提唱した論文。
A.ナガレタゴガエルの『早春の繁殖移動行動 (=産卵移動行動)の開始を規定する3条件』;
B.ナガレタゴガエルの『早春の繁殖移動行動期の1日(24h)の行動パターンと影響要因』; C.ナガレタゴガエルの『早春の繁殖移動行動開始後の行動中断要因』; D.[温帯地域の早期繁殖種(=冬〜早春に短日間で産卵する仲間)の両生類] に共通した、 | |
◎ 要旨(Summary):
1)[研究目的]:本研究では、下記@を主目的;ABCの3つの副目的とした。 修正・追記 @.冬眠明け後の繁殖行動(≒産卵のための移動行動:Breeding migration)開始の誘発要因・条件の解明 ⇒ 行動開始の誘発には、「行動開始日の[水温の上昇]・[降雨]・[水位上昇]等」よりも、 [冬眠中の日積算水温] や [日長≒冬眠日数] の方が重要な要因ではないのか?という推測から、 行動開始のための必須条件を詳しく調査・研究した。 ⇒ 一方、当日の誘発水温の値は、1日の、[最高・最低・平均] のどれが影響しているのかを統計解析した。 A.産卵移動行動(Breeding migration)の『中断要因(中断させる水温の閾値)』の統計解析・解明 B.産卵移動行動(Breeding migration)の『1日(24h)の行動パターン』の統計解析・解明 C.「水温が4℃に達すると繁殖行動を開始する(草野・福山、1987)」という報告内容を科学的に否定すること 2)[方法]: ※ 現在も、継続中(2017年度迄に約14万匹以上を捕獲)。 修正・追記 @.ナガレタゴガエルの早春の繁殖回帰移動行動(産卵のための移動行動)を東京都桧原村 [秋川上流域の沢] で、 9年度:[1991,1992; 1998-2004]、詳しく調査した。 ※ 「水温が4℃に上昇すると繁殖活動を開始する」と報告された調査地と、ほぼ同所で調査した。 A.沢の水中にネットトラップを複数設置し、1月下旬〜3月中旬の間、毎朝、各トップをチェックした。 B.自動記録温度計(データロガー)を12月下旬〜3月末まで、沢の水底の数ヶ所に設置し、 追記 ⇒ 調査開始 1.2年目は2カ所; それ以降は、3-10ヶ所に設置し、10分間隔で計測・記録した。 ⇒ 調査開始当初:1991〜1999年度は、0.01℃単位のセンサーの記録計(データロガー)で; 2000年度以降は、0.1℃単位のセンサーの記録計で記録した。 ⇒ もちろん、「現地で同時に計測した標準水銀温度計の値との比較から、 全ての自動記録温度計のセンサーの値を±0.1℃で補正」 した値を基に統計解析してている。 ◎ 基本、「各トラップの少し上流部の直射日光の当たらない、流水中の石の下に温度センサーを設置」 。 ⇒ 設置場所の根拠は、「冬眠場所の調査結果」から、多くの個体が、こういった所に冬眠していると推定されたため。 C.[トラップでの1日24時間の捕獲数]は、「朝8時〜翌朝8時の24時間」と設定。 ⇒ [この設定基準の根拠]は、「24時間の行動調査の結果」に基づいている。 D.[行動開始日]は、「各トラップで、1日当たり、繁殖移動期の全捕獲数の1%以上が入った最初の日」と設定。 例: あるトラップで早春の繁殖移動の1シーズンで1500匹入ったなら、 『1日当たり15匹以上入った最初の日』が、繁殖(産卵)移動行動開始日ということです。 たった1・2匹程度が入っても、それを開始日とはしていません。 ⇒ [この設定基準の根拠]は、[1]. 複数のモデルでロジスティック回帰分析した結果の適合度から; [2]. 欧米の類似研究の方法を参考にしたことによっている。 E.[1日(24h)の行動パターンの調査・統計解析]: 2時間ごとに、各トラップの中身を回収しチェックし、 [2時間ごとの行動数] と [水温] ・ [時刻] での相関分析 & 重回帰分析をした。 F.[行動開始の誘発要因の統計解析]: ◎ 説明変数: [a.冬眠中の日積算温度]・[b.冬眠日数≒日長]・[c.行動開始当日の水温]の3要因と、 応答変数: [行動数(トラップに入った数)] の有意性を、ロジスティック回帰分析で解析した。 ◎ [a.冬眠中の日積算温度]については、下記の3つの基準設定が必要となる。 「積算開始日」 は、1月10日・20日・30日; 「有効温度(積算するための1日の値)」 は、3℃以上;4℃以上;5℃以上の値 「使用する水温は、[日平均]・[日最低]・[日最高]」 ⇒ これら3つの変数の組合せによる、膨大なモデルを使用して、ロジスティック回帰分析した。 ◎ これらのロジスティック回帰分析は、各年度、各トラップ全てを使用して解析した。 3)[結果]: 9年度で、沢に設置したトラップで、53,139匹の成体を捕獲した。 (※ 冬眠期には18,008匹捕獲) @.[1日の日周期行動パターン]:【16-24時=日最高水温経験後】に行動ピークを示し、 【日最低水温後の朝8時頃】に最も活動が低下した。 ◎ 1日の行動は、[日水温]・[時刻] に、強く有意に相関していた。 ※ 1日の捕獲数:24時間の設定時刻を [朝8時〜翌朝8時]にした理由の1つが、この結果です。 A.[繁殖(産卵)移動行動の開始条件]:基本、[2月初旬以降]の、[日最高水温5℃以上への上昇]で誘発された。 ⇒ 誘発水温の閾値は、この論文データ:8年度の平均:5.07℃; 追記 ※ 9年度の調査なのに上記が8年度の理由:初年度1991年度は、ネットトラップの設置が遅れ = 産卵移動 行動開始後の設置になってしまったため、確実な開始日が不特定のためである。 水温は計測していてデータはあるのだが、開始日を特定できないため、1991年度を除いた8年度である。 ★ その後2017年までの 19年間での平均:5.00℃ (SD: 0.17)だった。 ★ もちろん、「この値:5℃には、年度間での有意差は無かった」。 ⇒ 2006年度(2007年産卵期)の値だけは除外している: なぜならば、後述しているが、2007年1月は 全ての流域で日最高水温が5℃未満にならず(=2016年12/26&2017年1/6の季節外れの大雨のため)、 産卵行動開始誘発水温は、全てのトラップで6.5℃ほどであった。 すなわち、2006年度の産卵行動誘発は、[開始日の5℃への水温上昇]に因らず、[日積算水温]にのみに 起因していたのである。 ◎ [ロジスティック回帰分析の結果] & [1日の行動パターンの調査結果] から、 「開始日の誘発水温」としては、[日最低]・[日平均]ではなく、[日最高水温] が有意に影響していた。 ◎ 最高水温は15時頃;平均は12時頃;最低は、日の出1・2時間後位の7.8時頃に記録し、 2-3月の晴天日での水温の日較差は、産卵行動期頃で約2℃弱;繁殖期ピーク or 以降で、3-4℃だった。 ⇒ つまり、2月の晴天日に、朝の水温が3℃強なら、15時頃の最高水温が5℃に達する。 ◎ また、「朝の水温が4℃弱位でも、午後にかけて冷え込み、水温が上昇せず、午後でも4℃強位の日では、 行動は誘発されなかった」 ⇒ このことからも、行動開始に影響しているのは、[日最低・平均]ではなく[日最高]の値と推定された。 ★ ちなみに、ヒキガエルでも、冬眠明け≒産卵移動行動開始の誘発温度として重要なのは、 夕方頃の地温≒最高地温と言う報告が古くから多数あります。ナガレタゴ・ヒキガエル等、多くのカエルでの 活動開始は、最高水温・気温・地温記録後であり、影響しているのは日最高温度なのです。 ★ また、1年間で見ると 「春の晴天日が、水温・気温・地温ともに、日較差が最大になる」 のですが、 このことが、生物の繁殖行動の開始に強く影響しています。 B.[行動開始日の5℃への水温上昇] よりも、開始日までの [日積算水温]・[冬眠日数] の方が重要であった。 B[1].【日積算温度の値】が十分に満たされない場合: ◎ 1月中でも、降雨後には、1〜2、3日は、日最高水温が5℃〜8℃になることが常であったが、 1月中では、日最高水温5℃以上への水温上昇でも行動は誘発されなかった。 ◎ 一方、1月中旬〜2月初旬が、とても寒く・低水温の年では、2月上旬に5℃以上になった日でさえ、 行動は誘発されず、移動行動開始は、2月中旬以降の5℃上昇日にまでずれ込んだ。 B[2].【日積算温度の値】は十分に満たされても、日最高水温が3月位迄ずっと5℃に上昇しない場合: ⇒ 当日の誘発水温の値は、 4.5℃前後にまで下がった。 B[3].【2007年の様な異常な年:1月中の日最高水温がずっと5℃以上:6-8℃の様な年】: ◎ 行動開始の誘発は、完全に【日積算温度の値】のみに因っていて、行動開始日の温度は、 どこでも、日最高水温6.5℃ほどであった。 ※ この論文のデータは2005年2月迄のものだが、この5・6は、その後のデータを加味した内容です。 C.[繁殖(産卵)移動行動の中断要因]:開始後でも、日最高水温が4℃以下になると、ほぼ活動を停止し、 特に日最高水温が3℃以下になると完全に中断した。 D.「ナガレタゴガエルの早春の繁殖移動行動の開始条件」: [ABの結果]&[そのデータの解析]から、 [1]. 【必須、日積算温度の完了(1月中旬頃以降の日積算温度)】(例:日最高水温3or4℃以上の値の合計); [2]. 【必須、最低限の冬眠期間の日数経過≒『日長』が最低限のある時間に達すること】; [3]. 【当日の最高水温5℃への上昇】; した日の夕方 の3条件が必要であり、[1].[2] の条件は、当日条件の [3] 以前に必須条件であった。 4)[結論]: ◎ 過去の数本の研究報告&本研究の結果から、 「温帯地域の早期繁殖種の両生類に共通する、冬〜早春の繁殖回帰移動行動の開始を規定する条件」 は、 以下の3条件であると提唱する。 [1]. 【『冬眠期間中の日積算温度(水温・地温・気温)』が、ある閾値にまで達すること】; [2]. 【『冬眠日数』が、ある閾値にまで達すること=『日長』が、ある閾値にまで長くなること】; [3]. 【行動開始日の温度(水温・地温・気温)のある閾値までの上昇】 ★ [1].[2] は、[3] 以前に、絶対必須完了条件である。 すなわち、たとえ[3] の誘発温度に達しても、[1].[2] が完了しないと、繁殖活動は誘発されない。 ★ [1].[2] の完了は、「体内の条件:生殖的準備の完了」を意味している(特に♀の産卵準備完了)。 |
◎ そもそも、この論文の焦点は、冬眠明け後の繁殖行動の開始誘発には、「行動開始当日の[水温の上昇]・[降雨]・ [水位上昇] よりも、[冬眠中の日積算水温] や [冬眠日数≒日長] の方が、重要な要因ではないのか? という推測から、「繁殖行動開始の必須前提要因」の解明を目的とした。 ⇒ 元々、「桜などの植物の開花;昆虫等の繁殖行動の開始、等々では、昔から、[日積算温度] や [日長] が重要」 と言われ、研究されてきている。けれども、両生類の繁殖行動開始の研究では、これまで、誘発要因として、 [日積算温度] や [日長] は、ほぼ顧みられてこなかったのです。 それでも、過去の欧米の5本ほどの論文中で、 「繁殖行動開始には、[行動開始日の温度上昇(地温・水温)] or [降雨]よりも、 開始当日迄の [日積算温度] や [日長] の方が、重要な要因のはずである。 なぜならば、 @.繁殖行動開始には、生理的条件が整うことが必要で、そのためには冬眠中の日積算温度が重要のはず; A.実際、野外調査時に、冬眠中のあまり早い時期では、行動誘発温度以上にまで水温や地温が上昇しても、 繁殖行動を開始しなかったからである。」と記述されています。けれども、このことを、野外調査における 実際のデータによって、統計解析で証明した研究報告はありませんでした。 ◎ それゆえ、[冬眠期中の日積算温度]・[冬眠経過日数(≒日長)] に着目し、長年の野外調査の実際のデータから、 [開始当日の水温] 以上に、[日積算温度]・[日長] の重要性を統計解析し、証明することを目的としました。 ★2.[研究の背景2]: [水温4℃で行動開始] という報告論文の全否定 追記・清書 ◎ 調査開始前から、「水温が4℃に達すると繁殖行動を開始する(草野・福山、1987)」 という報告内容が、 「あまりにおかしい、絶対にありえない」と感じていたので、検証・否定することを目的とした。 ◎ 特に、「何の言い訳もさせないため、国際誌で、複数の観点から科学的に、完全否定すること」を目的とした。 ◎ 更には、「おかしな言い訳:詭弁(調査場所が異なるから間違いとは言えないのでは?)」をさせないために、 草野らと、ほぼ同所(尾根一つを隔てた沢=大きく見て同一個体群)で調査した。 ⇒(同じ沢でもよかったが、通常、仁義・道義上、他の研究者の調査場所は避けるのが普通なので) @.「[水温4℃で行動開始]が、ありえない」と感じた理由@: 「東京都五日市町の沢では、活動開始の2月よりも前の、真冬の1月でも、 午後の水温(≒最高水温)が4℃以上になる日なんて、何度もあるだろう」と直感的に思っていたから。 ◎ すなわち、「4℃なんて、どうせ朝の水温だろう。この人(草野氏)は、野外の基本知識が全く無く、 おそらく、『水温に、 [日較差] が無い』 などと思っているからだろう。」と、感じたからです。 ◎ 実際、私が、この草野らの調査地とほぼ同所で調査開始した所、最初の2・3年で、「1日の最高水温」で見ると、 1月中に4℃を超えることなどは、たびたびあるのに、行動開始しないことがわかりました。 ◎ その上、1月に降雨があると5℃orそれ以上にもなるのに、行動を開始しなかったのです。 ◎ 更には、前述してますが、「朝よりも昼以降にかけて冷え込む様な日の場合で、朝の水温が4℃で、 追記 昼過ぎの最高水温でさえも4℃位の日では、全く動かなかったのです」 ◎ 何よりも、元々、草野らの観察=単に実質2年だけの&断片的なデータで、何一つ、結論など出せないのです。 A.「水温4℃で行動開始]が、ありえない」と感じた理由A: 「論文(?)中に、具体的な方法が、何一つ、記述されていなかった事」 ⇒ この報告論文(もどき=作文)には、「全ての方法が、いっさい記述されていない」のです。 ◎ [水温] は、「何を使い」;「沢のどこで」計測したのか; [日最高・最低・平均]のどれか or [何時の温度]か; ◎ [開始] は、「どれだけ(例:〜匹 or 〜%)動いた日の事」か;(& [1日の動いた数は、何時〜何時の24時間か]) 等々の、具体的な方法が、何一つ記述されず結論だけ書かれているのです。 ★ 様々な間接的証拠・状況・伝聞から、「午前中に1回(毎日でもない)計測したに過ぎないはず」と思われ、 後に、それとなく草野氏:本人に確認したら、「午前中・朝頃に水銀温度計で一度、計測しただけ」と認めた。 ★ しかも、この論文(?)には、何と他の内容([産卵(蔵卵)数が50-170個: 平均130個)]といった虚偽内容、等) についても、 何もかも、一切、具体的な方法が゙、何一つ記述されず、1つの論文に、10位の重要な内容が、 単に、結果・結論だけが記述されていたのです。 ★ 特に、この論文で最も驚いたのは、 実質上、引用文献 [研究内容に関連した文献]」 が、1本も無いことでした。 ⇒ 引用文献は、ごく少数で図鑑や本ばかりで、研究テーマに関連した研究論文の文献が、1本も無いのです。 ★ その上、 [論文タイトル]・[結果]・[考察] の3つの記述内容が、バラバラという不気味な代物なのです。 ⇒ 緒言(Introduction)や考察に、研究結果に関する、引用文献が、ただの1本も無いのです。 ⇒ 考察では、ただひたすらに、 「ナガレタゴは進化生態学的にすごいカエルだ」 と称えるばかりで。 ★ しょうが無いのです。草野氏には、論文を書く能力が全く無く、文献を収集する能力も全く無いのだから。
★3.[調査方法:統計解析するための適切な基準設定@]: 修正・追記 【『行動開始日』と『誘発要因(水温の値)』を統計解析するための適切な基準設定について】: ◎ 本研究のような、 「繁殖行動開始の [誘発要因とその値] の調査研究」 の場合、 まずは、 [開始日] & その[誘発要因:水温上昇 or 降雨 or 水位上昇、等] の相関関係の有意性を 調べ、示さなければならない。(※ なぜならば、 [水温の上昇] が行動誘発要因とは、限らないのだから) ◎ そして、 適切に統計解析するために、「@.[開始日] & A.[誘発要因(e.g. 水温)] を適切に基準設定すること」 が、とても重要となる。 [1]. 本研究での@.[開始日] & A.[水温] の基準設定: ◎ 下記の様に手順を踏んだ上で、[@.[開始日] について2つ; A.[水温] について2つ] の基準を設定した。 ★[開始日] の基準1: トラップでの1日(24時間)捕獲数の『時刻(何時〜何時の24時間か)』設定: ⇒ [トラップに入った1日の繁殖移動行動数] の [基準時刻]を『朝8時〜翌朝8時の24時間』と設定。 ◎ [この設定基準の根拠]は、「研究目的Bの24時間の行動調査」の結果に基づいている。 そして、24時間の行動調査の目的自体が、「1日の24時間の設定基準を適切に定めること」にあった。 ★[開始日] の基準2: 行動開始は、「〜匹 or 〜%以上の個体が動いた日」という『開始日』の基準設定: ⇒ 『各トラップで、1日当たり、繁殖移動期の全捕獲数の1%以上が入った最初の日』と設定。 例: あるトラップで早春の繁殖移動の1シーズンで1500匹入ったなら、 『1日当たり15匹以上入った最初の日』が、繁殖(産卵)移動行動開始日ということです。 たった1・2匹程度が入っても、それを開始日とはしていません。 ◎ [この設定基準の根拠] は、 (1).複数のモデルでロジスティック回帰分析した結果の適合度から; (2).欧米の類似研究の方法を参考にしたことによっている。 ★[水温] の基準1:【水温の計測場所として適切なのはどこか=冬眠場所はどこか?】の決定: ⇒ 『各ネットトラップの少し上流部の直射日光の当たらない、比較的流れの速い・水深20-30cm位の水底の、 大きな石の下にセンサーを設置して、自動記録温度計で、10分間隔で計測』と決定。 ◎ [この設定基準の根拠] は、 (1).『冬眠期の捕獲調査の結果』による。 ⇒ 元々、『冬眠期の捕獲調査の目的』が、『行動開始調査のための水温をどこで測るべきか』であった。 (2). [速い流水地・遅い流水地・流水のある砂利中、等にセンサー設置] での結果から。 ⇒ 冬眠場所の水域も様々であったこともあり、まずは、様々な水域で計測し、特徴を把握した。 その結果、「直射日光の当たらない、比較的流れの速い・水深20-30cm位の水底の、大きな石の下に センサーを設置して、自動記録温度計で、10分間隔で計測」が適切と判断したのです。 ※ なお、流れの遅い、淵のそばの止水に近い水域で計測すると、水温の日較差は流水域の2倍近くになり、 また、寒い時期には、朝、水温でさえ氷点下になります。 ★[水温] の基準2: 行動誘発水温として適切なのは【1日の『最低』『平均』『最高』のどれか?】の決定: ⇒ 『1日の最高水温の値』と決定・設定してロジスティック回帰分析した。 ◎ [この設定基準の根拠] は、 (1).これらの3変数の複数のモデルでロジスティック回帰分析した結果から; (2).Bの24時間の行動調査の結果から; (3).最も決定的な根拠は、〜(論文中に記載)。 [2]. <[開始日] & [水温])に関する、上述の4つの基準設定 の意義>: ◆ 「上記の適切な基準設定」は、「統計解析する上で=論文を書く上で必須」なのです。 これらの[開始日] & [水温]の基準が適切に決定されないと、 ⇒ 『行動開始日』&『誘発水温の値』の統計解析ができない。 ⇒ 「〜日に動いた・動く」;「〜℃で動いた・動く」などと主張できない。 ⇒ 「他の研究者が追試・再検証できない」 すなわち、「論文の内容が正しいか否か以前の問題」になるのです。 ◆ 「桜等の開花日も、『標準木』で『〜輪』が開花した」と基準設定している様に、カエル等の動物の行動 に対しても、「〜℃に達すると行動開始する」と主張したいならば、まずは開始日の基準設定が必須なのです。 なぜならば、最低限の前提として、「どれだけ動くと【開始】なのか」の基準が無いと、 「〜日に動いた=[開始日]」を、人によって、幾通りにも、都合の良いように解釈できてしまうからです。 ◆ 更には、「水温上昇で動く」などと主張したいならば、「最低・平均・最高」の区別以前に、 「どこで計測したのか&その根拠=冬眠場所の詳細」を記述しなくてはなりません。 ⇒ 気温は、「地表近くの値と高さ150cmでは、顕著に異なります」。 ※ 筆者は、秋の移動行動誘発の調査での『気温』は、地上10cmにセンサーを設置し、複数の場所で計測。 ⇒ 地温でも、「地表付近の温度と、地中深い場所での温度も、顕著に異なります」。 ⇒ 沢の水温も、「流れの速い場所;止水に近い場所では、顕著に異なります」。 そして、「この必要性の根拠」は、 「ナガレタゴガエルの主要な冬眠場所がどこか」にかかわるからです。 本来の冬眠場所の温度を計測すべきだからです。それゆえ、筆者は、まず、初年度・2年度目には、沢とは 言っても、複数の異なる微地形の場所 [速い流水地・遅い流水地・流水のある砂利中、等にセンサー設置] で 計測し、計測場所での違いでの特徴を把握。更には、冬眠場所の詳細を把握した上で、「直射の当たらない、 比較的流れの速い・水深20-30cm位の水底の、大きな石の下にセンサーを設置して、自動記録温度計で 10分間隔で計測」が適切と判断したのです。 ※ なお、流れの遅い、淵のそばの止水に近い水域で計測すると、水温の日較差は流水域の2倍近くになり、 また、寒い時期には、朝、水温でさえ氷点下になります。 ◆ また一方、きちんとした論文にしたいならば=結論・主張に正当性を持たせるには、上述の様に、まずは、 「行動開始の誘発要因」が、「当日の温度上昇」であるのか?を、統計解析する必要があるのです。 なぜなら、 「行動開始」に強く影響・相関している要因は、「当日の温度」よりも、「降雨・湿度」や「日長」や「水位の上昇」…等 かもしれないので、その場合、元々、「当日水温が〜℃に上昇したら行動開始」などと言えないからです。 それゆえ、この研究論文では、まず、「当日の温度」よりも「積算温度」・「日長」の方が重要と証明し、 更には、「水温4℃に達すると行動開始する」と言う主張を科学的に否定しました。 そして、 「日最高水温が有効であること」を示し、「行動開始当日の誘発水温の値を解析しました⇒5℃。 ★4.[なぜ [4℃で行動開始] という虚偽報告がなされたのか]: 修正・追記 ★5.[調査方法:統計解析するための適切な基準設定A]: 修正・追記 【ロジスティック回帰分析の説明変数の1つ:『日積算温度』の計算のための [3つの基準設定] について】: [1]. [3つの基準設定]: [方法] にも記述した様に、『日積算温度』の計算には、3つの基準設定が必須である。 ⇒ @「いつ(何月何日)からの積算か?」例: 冬至(最短日長日); 1月1日; 1月10日; 1月20日(≒大寒); A「日温度の何度以上の積算か?(例:5℃以上;10℃以上、等;通常は、単純に摂氏0℃以上を使用しない)」; B「使用する温度は、日最高・日平均・日最低のどれが適切か?」 ※ 誤解しないように:開始日の誘発水温(日最高温度)と、これは別物です。 ◎ 現状、@ABともに、いつ・どれがベストなのかは明確でない。 [2]. [@:いつからの積算]: @の基準日は、論文中でも述べているが、年度によって変化するはずである。 なぜならば、繁殖移動行動の開始は、体内の生殖器官の状態によっていて、これ自体が、その年の気候によって 変動するからである。 ◎ それでも、@については、植物・昆虫等の研究では、[12月20or21日:冬至(最短日長日)頃]; [1月1日]; [1月20日頃≒大寒];[2月2.3日≒立春の頃])、等が、最適と考えられ、固定して使用されている。 ◎ @について、本研究では、「一度、生殖器官の準備完了のためには、最も低温期を経験するのが必須であろう」 という考えから、「冬期に最も低温度になる初期の日が、積算開始にふさわしいはず」と推定した。 ◎ それゆえ、@の説明変数として、[1月10日] or [1月20日(≒大寒]の2つ選択し、ABの変数の組合せからの 数多くのモデルで、ロジスティック回帰分析をした結果、説明変数として[1月10日]・[1月20日] 共に、 有意であり、特に1月20日の場合のモデルのが適合度が高かったのです。 ◎ かようなわけで、本研究では、[最も寒い頃] がスタート基準に最適と考え、 そして、回帰分析でも適合度が高かったため、[1月20日(≒大寒)] を基準日とした。 [3]. [A.何度以上の値を使用;B.使うのは1日の平均・最低・最高温度のどれ?]: ◎ Aについて本研究では、0℃度以上;3℃以上;4℃以上;の3つの値を使用し、これらの組合せによる モデルで回帰分析した。⇒ 3℃以上;4℃以上でのモデルは、共に適合度が高かった。…。 ◎ Bについて、日最低・平均・最高温度の値、ほぼ全てで有意であり、全てのモデルで適合度が高く、かつ、 それらの値もほぼ変わらず、 「どれが最適なのか」、今の所、言いきれない。⇒ 本研究では、日最高を使用した。 ◎ また一方、ABについても、これと言い切れるベストな答えは、数十年のデータが無いと無理だろう。 [4]. いずれにせよ、「必須の『日積算温度』の値」=「体内の生殖器官の完熟までの日数」を意味する。 ※ 本論文中では、9年度のデータで、上記@ABの基準を様々、変えて膨大なモデルでロジスティック 回帰分析をし、もっとも適切な、基準を報告している。 ★6.[2006年度の異常な冬]: 修正・追記 ◎ ちなみに、2006年度の冬(12月下旬〜1月末まで)は、異常な年であり、 ◎ 何と2007年1月は、秋川上流域全域で日最高水温がずっと5℃以上(ホボ6-8℃)だったのです。 ⇒ おそらく、「関東・東海地方全域の山間部」 の全流域の沢の水温が、同じ傾向であったと推測されます。 ◎ この要因は明白で、 「2006年12月26日に小型台風並みの大雨があったこと」 & 「その上、2007年1月6日にも本降りの降雨」があったことによります。 ⇒ (小坂志川・矢沢の水源に最も近い観測所の [上野原] での降水量は、 12/26:125mm; 1/6: 38mm) ◎ そして、 通常、この時期ならば、雪かミゾレなのですが、上記の2度は、暖雨ぎみの大雨だったのです。 ◎ ゆえに、12月26日以降、ずっと水量が多く、日最高水温が5℃以下に下がらず、そのため、 何と、全ての沢で、1月25-30日に、繁殖(産卵)移動行動を開始したわけである。 ただし、この開始日までの条件としては、この論文で提示した数式が当てはまったのである。 このことは後日、論文として発表予定である。 ◎ ただし、12月上旬〜12月25日の間には、全流域とも、いったん、日最高水温が5℃以下に降下していました。 また、例年通り、節分(2/3)頃には、やっと強く冷え込み、2・3日間、各流域で4-5℃になりました。 が、各流域で、すぐに5℃前後 or 以上になり、全流域で、2月10日迄には産卵ピークを終えたのです。 ⇒ Top file の表の2006年度(=2007年1・2月)を参照 ※ 冬に、降雪でなく降雨があった場合、日最高水温は、基本、5℃を超え、5−8℃になります。 ※ また、真冬の低水温状態 (0-3℃位)にあった時には、ミゾレでも、基本、水温を少し上昇させます。 ※ そして、本降りの降雨で増水すると、その後に冬型で低気温が続いても、水温は、すぐには下がりません。 ★7.[標準英名・標準和名について]: 修正・追記 ◎ この論文中で、ナガレタゴガエルに対して、『mountain stream frog』 としているのは、 現在の『strean brown frog』が不適切だからである。 筆者は、今後も、ナガレタゴガエルに対しては、『mountain stream frog』ないし、『headwater frog』を 論文で使用する。なぜならば、この世界の研究者には自明なことだが、『stream brown frog』は、日本語の 意味としては、『ヤマアカガエル』に対して最も適した名前だから。この世界では、よくあることなのだが、 まだその種の生態がよくわからないうちに、英名で名前を付けると、実際には、他種に対して適した名前を 付けてしまい、長年に渡り、改定されないものである・単なるメンツのために。 ◎ このことは、[サドガエル]などというふざけた命名を許す体質に、象徴されている。⇒本来は[サドツチガエル] |
F.「Diel activity patterns during autumn migration to hibernation and
breeding sites in a Japanese explosive breeding frog Rana sakuraii 」
◎2017 Herpetological Journal 27 (2): 173―180. | |
◎ 主記載内容: 両生類の1日の行動パターンの研究報告の内、
秋の冬眠場所への回帰移動期における研究は、これが世界初の報告。
A.ナガレタゴガエルの『秋の回帰移動行動期の1日の行動パターン:薄暮性≒2ピークの夜行性』
B.ナガレタゴガエルの『1日の行動を規定する・影響を与える要因=至近要因(proximate factor)』 C.ナガレタゴガエルの『薄暮性の夜行性である適応意義=究極要因(ultimate factor)』; D.ナガレタゴガエルの『【秋の回帰移動期】・【冬の繁殖移動期】での1日の行動パターンの比較』 | |
◎ 要旨(Summary):
[目的・方法]: 1)◎ ナガレタゴガエルの秋の回帰移動期(水底移動):6年度[1999, 2001, 2002, 2005, 2013, 2014] 中の ◎ 調査中に、連続24時間調査(2時間ごとのトラップ回収を連続26-30h以上)を計15回実施した。 ◎ 10月中旬〜12月中旬に、秋川上流域の沢の数ヶ所にネットトラップを設置し、2時間ごとに各トラップの 中身を回収し、個体数・性別、等をチェックし、カエルは下流へリリースした。 ◎ 各トラップの上流の流れの速い場所の水深20cmほどの水底の石の下に、 追記 自動記録温度計のセンサー[0.1℃単位]を入れ、10分間隔で計測記録した。 ◎ 本研究では、[2時間ごとの行動数]と[水温]・[天気]・[時刻]との相関関係を統計解析しました。 ◎ また、1日の行動パターンについて、[♂・♀で]・[異なる沢で]、差があるのかを統計解析しました。 [結果]: 2) 1日の行動パターンは、[16-24時] に第1ピーク; [4-8時] に第2ピークとなる、 明瞭な2ピークの夜行性(bimodal nocturnal)、薄暮性(crepuscular)を示した。
3) ♂♀で、1日の行動パターンに有意な差はなかった。
4) 当然のことながら(?)、小坂志川 ・ 矢沢とで、1日の行動パターンに有意な差はなかった。 5) 1日の行動は、明らかに【時刻】と強く相関し、一方、【気温・水温】には相関していなかった。 6a) ただし、【時刻】よりは、実質的に【明るさ】に相関していると推定された。 ⇒ 1日の行動に直接影響を与えている要因=至近要因は、【明るさ】と推定された。 6b) なぜならば、降雨日や高曇りで、真昼でも暗い日には、日中でも少数の行動が確認され、 6c) 一方、深夜でさえも、月明かりで、若干明るい時には、少数の行動が確認されたから。 7a) 薄暮夜行性の適応意義=究極要因=ultimate factor は、【視覚的な捕食者回避】が、 最もふさわしいと推測された。
7b) なぜならば、秋の回帰移動は、完全に一貫して水底移動であり、【乾燥回避】は除外される。
7c) また、この時期には採食しないので、【餌の日周期行動パターンへの適応】も除外されるから。 [結論]: ナガレタゴガエルの日周期行動は、他の多くのカエル同様、『明るさ』に影響を受け・ 規定されている。その最適な明るさへの適応から、2ピークの夜行性:薄暮性となっている。 8) 【秋の回帰移動期】とは異なり、【冬の繁殖移動期】では、[16-24時]の1ピークだった(Miwa 2007)。 この理由は、「【冬の繁殖移動期】では、本来、第2ピークとなるはずの[4-8時]の水温が低すぎるから」 と推測された。 ナガレタゴガエルの活動には、日最高水温5℃以上が必須(Miwa 2007, 2017)であり、 冬の繁殖期の場合、朝の日の出前後は【明るさ】は最適でも、あまりに水温が低すぎる。そのため、 【冬の繁殖移動期】は、[4-8時]のピークが消失し、[16-24時]の1ピークになっていると推測された。 |
=至近要因= proximate factor としては、基本、【明るさ】である、と報告されている。ある研究者が、 121種類のカエルでの室内実験から、それぞれに最適な明るさがあると結論付け、日周期行動は、 主に、明るさに規定されていると報告している。2次的に1日の気温・水温・地温も関係するが…。 ★ 一般に、両生類の日周期行動の適応意義=究極要因= ultimate factor としては、基本的に次の3つ の要因が取り上げられる。 @:乾燥回避(夜行性の場合); A:捕食者回避(例: 夜行性ならば、 昼行性の視覚的捕食者からの回避); B:餌となる小動物の日周期行動パターンへの適応。 |
G.「Conditions controlling the timing of the autumn migration to
hibernation sites in a Japanese headwater frog, Rana sakuraii 」
◎2018 Journal of Zoology 304 (1): 45―54. https://doi.org/10.1111/jzo.12495 | |
◎ 主記載内容: 両生類の年間の回帰移動の誘発・既定要因の研究報告の内、
秋の冬眠場所への回帰移動期における研究は、これが世界初の報告。
A.ナガレタゴガエルの『秋の回帰移動行動期の開始を規定する3要因』;
B.ナガレタゴガエルの『秋の回帰移動行動期の終結を規定する要因』; C.『温帯地域の早期繁殖種(=冬〜早春に短日間で産卵する仲間)の両生類に共通した、 秋の冬眠場所への移動行動開始を規定する3条件』 D.『温帯地域の早期繁殖種(=冬〜早春に短日間で産卵する仲間)の両生類に共通した、 秋の冬眠場所への移動行動を終結・完全停止させる条件』 | |
◎ 要旨(Summary):
[目的・方法]: 1)◎ ナガレタゴガエルの秋の回帰移動を6年度[1999, 2001, 2002, 2005, 2013, 2014] 調査した。 ◎ 10月中旬〜12月中旬に沢の数ヶ所にネットトラップを設置し、毎朝、各トップ内を回収しチェック。 ◎ 10月中旬〜12月中旬に沢の水底の数ヶ所 & 陸上2か所に自動記録温度計を設置し、 追記 [0.1℃単位]の記録センサーで、10分間隔で計測記録した。 ◎ 本研究では、【秋の冬眠場所への移動行動】の、@.『開始を規定する条件・誘発要因』; A.『行動停止条件』に焦点を当て、統計解析した。 ◎ @では、[1日の行動数(トラップに入った数)]と[日気温(日最高・日平均・日最低)]・[日長(時間)]・ [天気(降雨の有無)]との関係をロジスティック回帰分析した上で、「降雨日に行動開始するまでに 経験しなくてはならない『必須日最低気温の値』&『必須最低日長の時間』」を回帰式から計算した。 ◎ Aでは、[1日の行動数]と[日水温(日最高・日平均・日最低)]・[天気(降雨の有無)]との関係を ロジスティック回帰分析した上で、「行動完全停止誘発水温の値」を回帰式から計算した。 [結果]: ◎ 秋移動期の個体は、総計 14,083匹(内80匹は未成熟個体:子)捕獲した。 2) ナガレタゴガエルは夏期には、枝沢の水源の水辺の陸上で活動し、秋:10月下旬頃に、 まず水中へと移動;その後、水底を流下移動し12月上旬頃に行動停止し冬眠(非休眠)に入った。
3a) 水中への移動開始日は、
@.少数の個体の開始日 [=minor start (trap に入った数が全体の1%以上になった初日)]は、 毎年、日最低気温が6℃以下に迄、降下した寒い日を経験した後の、最初の降雨日だった。
A.ほとんどの個体の開始日:初ピーク日 [=major start (同上:全体の5%以上になった初日)] は、
毎年、日最低気温が4℃以下に迄、降下した寒い日を経験した後の、最初の降雨日であった。
3b) 当然ながら、急に冷えこんだ年などでは、@・Aは同日であった。
3c) また、@・Aともに、移動開始当日の気温の値には、無関係だった。 3d) 移動行動開始日の平均は、 minor start:10月26日;major start:11月1日だった。 4a) 水中移動行動の完全停止を規定する要因は、日最高水温5℃以下になることだった。 4b) この停止誘発水温は、日最高水温であり、日最低・日平均の値は有意でなかった。 4c) この閾値【5℃】は、「冬の産卵行動誘発のための閾値」≒「冬眠明けの閾値」と同じであった。 5) [移動行動個体数] & [10-11月の【気温】・【水温】・【日長】・【天気】] との回帰分析から、 ナガレタゴガエルの秋の冬眠場所への移動行動の開始(major start)には、 <1>:【必須最低気温の経験:ナガレタゴガエルの場合、日最低気温4℃以下の経験】; <2>:【必須最低日長になること:本調査地の場合、660分以下になること=10月25日以降】; <3>:【(1)経験後の最初の降雨日】; の3条件が必要であり、 <1><2>の条件は、当日条件の<3>以前に必須条件であった。 [結論]: 6) 過去1本の類似研究&本研究の結果から、温帯地域の早期繁殖種の両生類に共通する、 秋の冬眠場所への回帰移動行動の開始を規定する条件は、以下の3条件であると提唱する。 <1>【必須最低温度(気温・水温・地温、等)の経験】: この閾値の値は種によって異なるが、 多くの種で、日最低気温が降霜になる位:5℃以下位と推測される。
<2>【必須最低日長への降下: ある閾値迄、日長が短くなること】;
<3>【<1><2>経験後の最初の降雨日 or 高湿度の日】 <1><2>は、<3>以前に絶対必須完了条件である。 ★ <1>の低温経験日に移動開始しないのは、この日では、低温すぎるからと推測された。 ★ <1>の方が、<2>よりも重要な要因と考えられる。なぜならば、↓ <1>は、種に特有な値で、種により異なる; <2>は、同種であっても、生息地により異なる。 ⇒ 例えば、標高の高い地域や高緯度の低温地域の場合、<1>の閾値温度になるのは、より夏に 近い日長が長い時期である。つまり、同じ<1>になる平均日の日長は、生息地によって異なる。 <1>は同じでも、寒い地域ほど<2>の閾値は短くなり;暖かい地域ほど<2>の閾値は長くなる。 7a) 過去数本の類似研究&本研究の結果から、温帯地域の早期繁殖種の両生類においては、 【秋の(冬眠場所への)回帰移動行動の完全停止を誘発する温度(気温・水温)の閾値】 = 【冬(or早春)に冬眠明けを誘発する温度の閾値】 = 【冬(or早春)の繁殖回帰移動行動を誘発する温度の閾値】である。 7b) 7aの温度は、日最高温度の値であり、日最低・日平均の値ではない。 |
理由は:『冬〜春の繁殖期の移動に比べ、下記@ABの理由で目立たず研究が困難だから』 @.繁殖期の様に鳴き声など聞こえず目立たない; A.繁殖期移動は、同一場所への集団移動で目立つが、秋移動は分散傾向で目立たない; B.Aの到着場所の冬眠場所も分散傾向にあり、繁殖地での密集地に比べ目立たない; そのため、2000年前後のある2本の論文(ヨーロッパ1本&日本1本)では、「これまでに秋の回帰移動 の研究報告は1本も無い」などと偽りの記述がされているほどである。そんな偽り記載が、まかり通る ほど、少ないということ。私が知る限り、両生類の秋の回帰移動について記述されている論文は、 世界でこれまでに、約60本ほど。その内、秋の移動行動自体に焦点を当てている研究報告は、30本 ほどのみである。けれども、移動行動開始を誘発・既定する要因・条件に焦点を当てている論文は、 1本のみ(北欧でのアカガエルの秋の回帰移動: 1974年)で、かつ、これでさえ2年度のデータからの 単なる状況報告で、統計解析しているものではない。 ◎ 筆者の本論文が、「両生類の秋の冬眠場所への移動行動の開始・停止の条件を統計解析し報告 した世界初の論文」であるが、それができた重要な要因は: @.ナガレタゴガエルは、魚類の回帰移動の様に水中移動であること; A.莫大な生息数:日本最大 の生息数を誇るカエルであること; B.@Aの理由から、秋の移動期でさえも大量捕獲が容易で あったこと、が挙げられる。 |
◎ 一連のナガレタゴガエルの調査研究における財団からの助成研究 | |
1).1998年4月〜2001年3月(とうきゅう環境浄化財団 No.1998-22)
「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生態学・発生学的研究と棲息環境の保全について」 | |
2).2002年4月〜2004年3月(とうきゅう環境浄化財団 No.2002-49)
「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの生命表の作成、及び、水位と流下行動の相関関係についての研究」 | |
3).2003年10月〜2004年9月(クリタ水・環境科学振興財団 No.15301)
「世界で最長の渓流水中回帰移動をするナガレタゴガエルから見た森林内渓流域生態系の保全について ― 森林伐採・林道造成等による人為的な渓流の氾濫による個体群への影響」
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4).2005年4月〜2006年3月(藤原ナチュラルヒストリー振興財団)
「秋川上流域におけるナガレタゴガエルの個体群密度・総数、及び、その年変動に与える要因」 | |
5).2011年11月〜2012年11月(住友財団 No.113582)
「本州源流域生態系の重要な指標動物であるナガレタゴガエルの繁殖活動期間の詳細」 |