《1》.渓流魚の様に、「水中・水底を長距離回帰移動」 & 「尾根越え分散移動」。
《2》.秋に抱接行動=ペアリングを開始し、 冬眠期(非休眠タイプ)中に、ほとんどの♀の抱接が完了。
《3》.個々のペアの [抱接の継続期間] が超長期間に及ぶ。 (平均7週間; 最長5ヶ月間)
特に、産卵行動開始以前の冬眠期のみならず、冬の産卵行動期間中でさえ、長期間に及ぶ:「超難産」のため。 《4》.性転換により個体群の真の性比が、顕著な♂バイアスで、かつ、 この性比が1:1〜1:4と顕著に年変動する。 (平均、♀:♂=1: 2.25)
★《2,3,4》は世界の両生類でナガレタゴだけの;《1》は世界のカエルでナガレタゴだけの特異な特徴です★
《5》.約半年間、基本、水面に息継ぎに上がらずに水底生活。 これは、世界のカエルでは、ナガレタゴガエルと他の3,4種ほどでしか確認されていないこと。
《6》.莫大な生息個体数を誇り、かつ、同一個体群の生息域が広大。
《8》.繁殖行動の特徴:[求愛様式];[産卵用式];[産卵数]…等々。 《9》.個体群生態:[体長]・[寿命]・[年齢構成]…等々。 |
★ ナガレタゴガエル等のアカガエルの仲間は、水中冬眠が基本です。
★ 純粋に陸上冬眠するアカガエル=凍結耐性種は(現在までに報告されているのは)、 Rana sylvatica (= Lithobates sylvatica), Rana arvalis, Rana lessonae の
3種だけです!
水中冬眠が珍しいだとか、世界でナガレタゴガエルだけとか、空恐ろしい虚偽記載しているものが
多数ありますが、甚だしい間違いです。 |
@.『ナガレタゴガエルは、秋に繁殖行動を開始し、水中冬眠期に♀のほとんどがペアリングを完了する。』 ⇒ 本研究の東京都秋川流域での20年間でのデータからでは、約90%の♀が1月下旬の冬眠期中 に、抱接完了していると推定・計算された。抱接の開始は、早い年で10月末; 遅い年で11月10日頃、 平均で11月初旬には、一部の♂が♀への抱接行動を開始する。もちろん、標高の高い、気温・水温 の低い地域では、毎年、10月中・下旬に抱接行動を開始しているはずである。 ※ 手作業での捕獲データのみでは、冬眠期の後半〜産卵移動開始直前での、全体♀における、 被抱接割合(=♂に抱接されている割合:つまり、ペアになっている♀の割合)は、20-50%位です。 この数字だけ見ると、人によっては、何で90%なんだ!と思うかもしれませんが、…。冬眠期に、人が 手作業で捕獲できる個体は、実際の生息数の10%ほどなんです。人が捕獲できない約90%の 個体は、…なんですよ。実際、あらゆる側面から計算・逆算して、産卵移動開始前に、ペアリング完了 している割合は90%ほどなんです。でないと、多くの現象が矛盾するのです。 ◎ これらのデータ・統計解析値は、まだ、ここでは示しません。とても重要なデータなので。 ★ つまり、2月〜3月上旬頃の産卵移動期に、多くの淵・トロ場に♂の集団が目立つのですが、 実は、これらの♂は、「冬眠期中にペアになれなかった、あぶれ♂」で、ペアリングできない運命の (=未産卵のシングルの♀には基本的に出会えない)♂達なんです。 一般的なカエルの種では、日本のヒキガエルやアマガエル等の様に、産卵場所に♂の集団がいて、 そこに♀がやってきて♂が抱接するわけです。 けれども、ナガレタゴガエルや世界の一部の種では、ほとんどの♀のペアリングは、産卵場所に来る 前に、ほぼ完了していて、産卵場所にいるシングルの♂の集団は、もうペアリングできない運命にある のです。 この点は、あえて、詳しく書きませんが…。 ゆえに、ナガレタゴガエルの場合、基本的には、野外でペアリングの瞬間を見ることはできません。 A.『ナガレタゴガエルは、超長期間、抱接を継続する。 特に、【産卵行動開始以前の冬眠期】だけでなく、【産卵期中】でさえ、 抱接継続期間が長期に及ぶのは、世界のカエルで唯一、ナガレタゴガエルだけ。』 ⇒ 本研究の20年間のデータからでは、 ◎ 抱接期間の平均は7週間=【産卵行動期開始前の平均25日】+【産卵行動期間中の平均23日】; ◎ 推定される最大抱接期間は、約5カ月間=【11月初め〜3月末or4月初め】 ◎ 現地での水槽内での観察による、最も遅い抱接継続確認日は、 【3月31日: この♀は正常産卵し、産卵後に♂が抱接を解除したのがこの日】 & 【4月5日: この♀は結局産卵できず、♂は解除したのがこの日】; ◎ 野外でのトラップで、最も遅く捕獲されたペアは、【例年3月下旬で、2年度で3月27日】だった: ただし、このペアは、3月27日のリリース後に、結局いつ産卵し、抱接を解除したかは不明。 |
【前提知識1】: 両生類の有尾類(尾のあるサンショウウオ・イモリの仲間)の一部の種は、秋にペアリングし、
♂が♀に『精包』(精子の塊)を渡します。この精子は早春まで、♀の体内で正常に機能を維持し 蓄えられます。そして、冬眠明け後の早春に♀は、体内で受精させ産卵します。 日本のアカハライモリも、一部は秋にペアリングし、【♂の精包】の♀への受け渡しが行われ; サンショウウオの一部の種でも、秋にペアリングし、【♂の精包】の♀への受け渡しが行われます。 ただし、特徴的なのは、これらの種では、冬眠明け後にもペアリングし、♂の精包の受け渡しが 行われること。例えば、日本のアカハライモリも、地域によっては秋にペアリングが行われ、また地域 によっては、晩春にのみ、ペアリングが行われます。 いずれせよ、【産卵】は、冬眠明け後です。 【前提知識2】: 両生類の無尾類:カエルの仲間でも、 北米の源流域生息の尾ガエル=交尾ガエル (Ascaphus truei)は、秋にペアリング&交尾して、♂は♀へ精子の塊を渡します。 この精子は、♀の輸卵管内でずっと機能を維持し、♀は冬眠明け後、体内で受精させ、晩春〜夏に 産卵します。また、北米でも地域によっては、尾ガエルの交尾は秋ではなく、春です。 【前提知識3】: 冬眠に入る直前に、個体群全体の一部の個体が、ペアリング:抱接して冬眠する カエルは、一部の種で知られています(⇒ 中国山間部のアカガエルの仲間=日本のヤマアカ ガエルの近縁種 & 韓国の山間渓流部のヒキガエルの仲間=日本のナガレヒキガエルに似る)。 ◎ ただし重要な点は、この2種では、「多くのペアリング:抱接は、冬眠明け後であること」; 「ナガレタゴガエルとは異なり、休眠冬眠であり、冬眠期中にペアリング:抱接行動はしないこと」である。 【前提知識4】: 温帯の両生類:特にカエルは、繁殖様式で2つのタイプに分けられます。 1) 早期繁殖種(Explosive breeders): 冬〜早春に産卵し、繁殖産卵行動期間は短期間(1つの 地域で、数日程度)。 典型的な種の例として: 日本では、ヒキガエル&茶色いアカガエルの仲間: (ヤマアカガエル・ニホンアカガエル・ナガレタゴガエル)。 これらのタイプの種の場合、産卵後、しばらく春眠するのが普通 & 夏眠することが多い。 2) 継続的繁殖種(Prolonged breeders): 晩春〜夏に産卵し、1つ地域の個体群の繁殖産卵行動 期間が長期に及ぶ種。典型的な種は、アマガエル・アオガエルの仲間 & 緑色のアカガエルの 仲間。日本では、アマガエル・モリアオガエル・カジカガエル・ダルマガエル・トノサマガエルなど。 【前提知識5】: カエルの個々のペアの抱接継続期間: 一般に、カエルは、♂が♀に抱接したなら、すみやかに産卵をします。 個々のペアの抱接継続期間は長くても、継続的繁殖種(Prolonged breeders)で、数時間; 早期繁殖種(Explosive breeders)でも、数時間〜数日と言われます。 ◎ ただし、世界には、ごく一部の種で、抱接継続期間が数か月に及ぶ種が古くから知られています。 a: 亜熱帯の中南米の山間部のあるヒキガエルの場合、一部の♂は、産卵期の4・5か月前に 抱接を開始しペアになり、産卵期になると、そのペアの状態で渓流に移動して産卵します。ただし、 ほとんどの♀のペアリング:抱接完了は、産卵期直前だそうです。 b: オーストラリア西部の、半乾燥地域のある2種のカエルは乾季に夏眠をし、夏眠明け後に産卵 するのですが、地中の穴に夏眠入りする時に、多くの♀は♂と寄り添うようにペアを形成し、その 状態で過ごし、ペアの継続という見方では、約5カ月に及ぶそうです。ただし、この2種の場合、 抱接 (♂が♀に背側からしがみつくペア形成) 状態でのペアリングではありません。 c: 前提知識3に記述したように、中国山間部のヤマアカガエル; 韓国山間部のナガレヒキガエルも、 一部は、冬眠入り直前に抱接:ペアリングして、休眠冬眠するので、これらの場合も、一部のペアは、 最長で、4・5カ月の抱接を継続しているだろうと推測されています。 |
[特徴@の重要性]:ナガレタゴガエルの抱接行動の時期:[開始 & ほとんどの♀の完了] が、
世界の温帯の両生類で、唯一・独特 (Unique = only one) であることの正しい理解
⇒ 前提知識1・2・3に記述したように、温帯の両生類でも、冬眠入り前の秋にペアリングをする種は、
少ないながらもいるわけです。しかし、前提条件1のサンショウウオ類や前提条件2の交尾ガエルの 場合、精子の受け渡しを終えたら、すぐにペアリングは解消されます。また、前提条件3の中国・韓国 の山間部渓流域生息のアカガエル・ヒキガエルの場合、一部のペアリング形成が冬眠入りする直前 ですが、多くは冬眠明け直後であること & 冬眠中は休眠状態で、冬眠期中には抱接行動はしません。 ★ところがどっこい!★ ナガレタゴガエルの場合、前提条件1・2・3の種とは異なり、「冬眠場所≒産卵場所への秋の移動期 に既に抱接行動を開始し、更には、 冬眠期中(非休眠)に、ほとんどの♀の抱接が完了する」のです。 |
[特徴Aの重要性]:ナガレタゴガエルの抱接の継続期間が
世界の温帯の両生類で、唯一・独特 (Unique = only one)であることの正しい理解
⇒ 前提知識4・5に記述したように、世界には、ごく一部の種で、抱接継続期間が、2-5カ月間に及ぶ
が知られています。しかしながら、中南米の山間部のヒキガエル&西オーストラリアの乾燥地域の カエルの仲間&中国山間部のアカガエル&韓国山間部のヒキガエル、これらの場合は、抱接ないし ペアリングの継続期間が長いのは、産卵期以前だけです。すなわち、冬眠明け後・夏眠明け後等の、 産卵期になると、すみやかに産卵し抱接を解除します。 ★ところがどっこい!★ ナガレタゴガエルの場合、前提条件5の種とは異なり、「冬眠明け後=産卵行動開始後にさえも 超長期間、抱接を継続させる ⇔ 『超難産』のため」。 このことが特徴のBに関係してくるのです。 |
★[ナガレタゴガエルにおいて、特徴@Aが可能な要因と、その適応意義]:
◎⇒ 冬眠期中に、ほとんどの♀が♂に抱接されることが可能な最大の要因は、冬眠期に非休眠状態で リアクティブ、時にアクティブだからです。そして、このことを可能にしている要因は、水中生活期に、 異常に皮膚を伸張させ体を扁平にして、皮膚呼吸だけで水中生活可能にしている適応です。 ◎ また水中冬眠は♀にとって、♂を長期背負うという負担を、浮力により軽減させているという利点が あるのです。 ◎ また一方、秋から抱接し、冬眠期中(産卵移動行動開始前に)に、ほとんどの♀の抱接:ペアリングを 完了する、生態的適応意義は、…。今は、ここでは書きません。 ★ ちなみに、産卵期の抱接の超長期継続に最大の原因=『超々難産』の理由は、 「卵が大きいから」が理由ではありません。 ◎ 一部の図鑑、等の書では、産卵に日数を要する理由が、あたかも、「卵が大きいこと」として いますが間違いです。私も、当初は、一つの要因かとも思いましたが…。 なぜなら、タゴガエル・カジカガエルもほぼ同じ大きさの卵ですが、難産ではありません。 更には、タゴガエルの♀の方が、体は少し小さいのに、卵の大きさはナガレタゴガエルと同じ; けれども難産ではない。すなわち、「卵が大きいから難産と言う理由は完全に否定される」わけです。 では、ナガレタゴガエルの超々難産の理由は? わかってますが、これはとても重要な内容なので、ここではまだ明かせません。 |
◆《第1段階》: 見かけ上の性比ではない、真の個体群性比の解明 ⇒ 非繁殖期に調査
◆《第2段階》: 第1段階で真の個体群性比が顕著に♂(or ♀)バイアスであると証明された場合、 その原因が性転換に起因するのか否かの区別。 まずは、『♂♀の死亡率の有意差』・『性成熟年齢の♂♀の有意差』・『個体群の年齢構成』の データが必須。⇒ その結果、性比の顕著な偏りの要因は、以下のア・イのどちらかになります。 ア: ♂♀の死亡率の違い、性成熟年齢の顕著な違い、等が主因であり、性転換は起こっていない。 イ: ♂♀の死亡率等に有意差はなく、性比の偏りは、性転換に起因していると推定される。 ⇒ イである場合、野外で考えられる性転換の誘発要因は何か? 野外での様々なデータからの推定 ◆《第3段階》: 第2段階のイで推定された要因の、実験上での証明 ◆《第4段階》: 第3段階で、野外観測データから推測された要因が実験上でも証明されたならば、 最終的には、分子生物学的に、遺伝子的に、性転換を誘発する部位は何か? なぜ、第2・3段階で判明した要因が、その部位に働きかけるのか? |
★ ≪第1段階=真の個体群性比の解明≫でさえ難しい理由は〜〜〜:
両生類の野外調査における個体群(Population)の性比(SR: sex ratio)の研究報告の多くは、 繁殖活動場所における機能的な(見かけ上の)比率(OSR: Operational sex ratio)であり、 真の性比では無いのです。 ◎ [機能的]・[見かけ上]とは: 「繁殖場所には、全ての成体が同時に集まっていない」ために、 「繁殖期・繁殖場所での観測or捕獲データでは、真の性比を示さない」という意味です。 この理由は、通常、繁殖行動には♂♀によって行動に差異があるからです。 それゆえ、「個体群全体の真の性比を知る」には = 「真の平均的な♂♀の生息数収集のための 観測・捕獲を実施する」には、基本、♂♀の行動にほぼ差の無い非繁殖期でないとならないのです。 【両生類の繁殖場所での観察&捕獲データでは OSR (機能的な・見かけ上の性比)になる理由】: <1>.目視の観察の場合@: 多くの種の場合、♂は産卵場所に♀より早くから集団で待機し、かつ、 ♂は産卵期の最後まで居残ります。更には、♂の場合、♀とは異なり『複数回繁殖が可能』 = 『複数の♀とペアになれる』(一度、♀とペアリング・放精し、その後、別の♀とペアリング・放精が可能)。 そのため、♂は、ほぼ全個体が産卵場所にずっと居るので、実際の全数の♂が目視観察できます。 一方、♀は個々に、産卵しては退出していくので、観察場面ごと=見かけ上の観測数では、実際より ♂が圧倒的に多くなるのです。これを避けるには、全ての個体にマーキングして、区別・チェック しなければいけないのですが、それは容易ではありません。 <2>.目視の観察の場合A: ♀は種によって=寿命の長い大型種:日本のヒキガエルなどの場合は、 毎年産卵せず、1年おき:2年に1回産卵するため、産卵場所に毎年姿を見せるわけではない。 このこともあり、産卵場所の観察では、見かけ上、実際より♂が圧倒的に多くなる。 <3>.産卵場所に来る個体のトラッピングでの捕獲数の場合@: 多くの両生類の場合、♂は♀に比べ、 繁殖期以外にも、繁殖地・産卵地に留まる傾向にあります。そのため、産卵場所に居ついていた ♂はトラップに入りません。その結果、捕獲数での性比は、見かけ上、実際より♀が大きくなる。 <4>.産卵場所に来る個体のトラッピングでの捕獲数の場合A: ナガレタゴガエルや一部の種では、 産卵場所に来る前に、既に多く:90%位の♀のペアリングが完成している。そのため、産卵期の 移動個体のトラッピング個体は、ほとんどペアであり、この性比は、常に1:1に近いことになる。 つまり、この場合、ペアになっている♀=♀の全数はトラッピングされるが、ペアになれなかった♂は、 トラッピングされない。その結果、捕獲数での性比は、見かけ上、実際より♀が大きくなる。 ⇒ 例えば、ナガレタゴガエルの場合、実際の性比は♀:♂=1:3でも、産卵期のトラップデータでは、 毎年、1:1〜1:1.5位となり、見かけ上、♀の比率が実際よりも大きくなる・偏るのです。この理由は、 多くのシングル♂=冬眠期中に♀に抱接できなかった♂は移動せず、トラップに入らないからです。 かような理由で、繁殖期の目視による観察・観測データでは、真の個体群の性比よりも♂バイアスに 偏りがちになり、また、トラップでの捕獲データでは、真の性比よりも♀バイアスに偏りがちなのです。 『全部の成体が、同時に繁殖場所に現れているような動物種なら問題ないのです』or 『♂♀で、移動行動の有意差が無ければ問題ないのです』が…。
それゆえ、真の個体群性比は、基本的に、繁殖期のデータからはわからないのです。
◎ ところが、一般に、カエルに限らず多くの動物種の場合、非繁殖期に大量に捕獲or観測するのは、 非常に難しいのです。密集せず、鳴き声も聞こえず、捕獲や観測自体が困難なため。 更には、実際には多くの種で、非繁殖期の夏の採食期でさえ、多少、♂♀で行動様式に差異があり、 夏期・採食時期のデータからでさえ、少し信頼性に欠けます。 ◎ それゆえ、最も確からしいのは、冬眠期に大量の個体を捕獲したデータなのです。 けれども、冬眠期に大量捕獲など困難で、冬眠期捕獲データによる性比の研究自体など基本無い。 それゆえ、両生類の真の個体群性比の報告は、ほぼ無いのが実情なのです。 ★ところがどっこい!★ ◎ ナガレタゴガエルの場合は、日本で生息数が最も多いカエルというのみならず、 冬眠期に大量捕獲 できるカエルであり、私は、これまでに、冬眠期中の個体を手作業で3万匹以上捕獲してきました。 そして、『過去、計25年度での、冬眠期の手作業での捕獲データによる性比』を、統計解析した所、 『上・中・下流での有意差はなく、かつ、同一年度では、異なる沢での有意な差も無かった』。 つまり、冬眠場所に♂♀での有意差はなく、『冬眠期の捕獲データによる性比は、真の個体群性比 を示している』のです。これまで捕獲してきた約14万匹の内の、約3万匹は冬眠期のデータです。 ◎ そして、冬眠期捕獲データからの性比の結論として、…(詳細はまだ、ここでは書けませんが): 『真の個体群性比が、♀:♂=1:1〜1:4と顕著に年変動し、総じて、 顕著に♂バイアスである』と いうことが、膨大なデータで、統計解析上、証明されました。 ここまでが、ナガレタゴガエルの性比の年変動・性転換の要因の解明の≪第1段階≫です。 ※ 参考までに: 本研究のナガレタゴガエルの場合、『秋の移動期のトラップでの捕獲』 & 『春眠期の 手作業での捕獲』の膨大なデータによる性比のデータもあります。が、これら2つの時期は、冬眠期の 性比のデータとほぼ一致しますが、若干異なる点もあり、厳密には、真の個体群性比のデータとして 使用できません。 その理由:@.春眠期には、既に気温がそこそこ高いこともあり、本降りの降雨で増水した後には、 ♀の一部は陸上で春眠する傾向にあります。そのため、水中捕獲個体のデータでは、真の性比と ずれるのです。一方、春眠期の生息場所には、♂♀で少し違いがあるため、春眠期の性比データは、 厳密には使えません。 A.秋の移動期も、少し♂♀に差があるのです。繁殖期の特徴で上述したように、ナガレタゴガエル の一部の成体は、春眠期後にも繁殖場所に留まり、上流方向へ回帰移動しません。この割合に 若干、♂♀の差異があるのです。他にも理由がありますが、いずれにせよ、秋の移動個体の捕獲 データによる性比も、若干、真の個体群性比とずれるのです。 ◎ かように、ナガレタゴガエルの場合、まず他の種と同様、『繁殖期のトラップ捕獲データ』は、 真の個体群性比として全く不適切で使えません。また、『秋の移動期のトラップ捕獲データ』& 『春眠期のデータ』も、残念ながら、厳密には使えないのです。 |
★ 【真の個体群性比が極端に♂バイアス&年変動していることが事実】であることを受けて、
次に≪第2段階≫です ⇒ ア: ♂バイアスなのは、遺伝子的♀の個体が、生殖的(表現型)に♂に性転換しているからか? ⇒ イ: ♂バイアスなのは、性転換が起こっているからでは無い。 イ@: ♂バイアスなのは、♂♀の死亡率の違いからか(=♀の死亡率が高いから)? or イA: ♂バイアスなのは、♀の性成熟年齢が極端に♂より遅いからか? そして、アの性転換に起因するならば、その要因は何か? ◎ ナガレタゴガエルの場合: 調査データの解析結果から <1>, まず、ナガレタゴガエルでは、♂♀に大きな死亡率の差はありません。 <2>, 性成熟年齢についての差は、若干あります。 ♂♀ともに、生誕2年目に性成熟しますが、多くは3年目です。♂は、♀よりも多くの割合で2年目に 性成熟します。♂では、個体群全体の半数強が3年目の個体;20%強が2年目の早熟個体; ♀では、半数強が3年目;5-10%が2年目の早熟個体です。 一方、2年目に性成熟する割合は、それぞれ年の夏の気候に左右されます。 この点は多くの両生類の種に共通です。例:ヤマアカガエルも、♂♀共に一部は2年目に性成熟しますが、 その割合は♂♀で差があり、かつ、2年目に性成熟する割合は、夏の気候に左右されます。 <3>, 第1段階の結論にあるように、性比は、1:1〜1:4と、顕著に年変動します。 重要なのは、[常に1:3]のように固定されているのではないこと。例えば、数少ない研究報告では、 [常に1:2で♂バイアスであった]or[常に1:2で♀バイアスであった]といった個体群性比の報告は ありますが、ナガレタゴガエル個体群のように、[顕著に年変動する]という研究報告は無いのです。 ★ <1><2><3>から、ナガレタゴガエルの個体群性比が顕著に1:1からずれているのは、性転換に 起因している以外に考えられません。 なぜならば、@.死亡率に有意差がなく性比が極端に♂バイアスだから; A.仮に死亡率に顕著な有意差があった場合でも、ほぼ[♀:♂=1:2]の様に固定されるはずだから; B.性成熟年齢には、若干、差がある(♂の方が早い)ので、もしも性転換が生じていないならば、 ナガレタゴガエル個体群の真の性比は、♀:♂=1:1.2位で固定されているはずである。 ところが、実質♀バイアスとなる♀:♂=1:1になることからも、性転換していると考えられる。 つまり、『顕著な♂バイアスは性転換に起因』の決定的な根拠が、『性比の顕著な年変動』である。 ★ ちなみに、両生類の数少ない真の個体群性比の研究報告で、1:1からずれていても、それは、 『♂♀の死亡率の違いが主因である』と結論づけられている場合がほとんどである。 ⇒例: ♀の死亡率が♂よりも高いために、常に♀:♂が1:2などのように。 また一方、性成熟年齢が顕著に異なる場合も、恒常的に性比がずれる。 ⇒例: ♂は2年目;♀は3年目に性成熟し、かつ、寿命の短い種の場合、死亡率は同じでも、 ♂バイアスになるわけである。 ★ところがどっこい!★ ナガレタゴガエルの場合は、個体群性比が1:1から偏るのは、♂♀の死亡率等の違いではなく、 ある要因による性転換が理由によっているためであり、それゆえ、性比が顕著に年変動するのです。 |
【前提知識1】:<性決定: Sex Determination (SD)>: 脊椎動物の内、 ◎ 哺乳類・鳥類は、基本的に、『GSD』:遺伝子的性決定(Genetic Sex Determination)です。 性は、遺伝子、すなわち、性染色体によって決まります。 人間などは、[XY型]で、XX (ホモ)が♀で、XY (ヘテロ)が♂です。 また、[ZW型」の動物群では、ZWが♀で、ZZが♂など…。 ◎ 一方、爬虫類・両生類・魚類は、『GSD』:遺伝子的性決定 のみならず、 『ESD』:(Environmental Sex Determination)環境依存性決定、にも起因します。 元々、爬虫類・両生類・魚類の個体は、遺伝子的な性に関わらず、両方の生殖器官があり、 成長の過程で、どちらにもなれる生物群です。 すなわち、ある環境要因の影響で、性転換『SR』(Sex Reversal)するのです。 この性転換は、通常は初期発生の段階で生じますが、魚類や一部の両生類では、成体でも生じます。 よく知られているのは、爬虫類での『ESD』です。爬虫類の多くの種では、実験的に、 『TSD』(Temperature Sex Determination ):温度依存性決定が、知られています。 卵の孵化までの周囲の温度によって性が決まるわけです。この場合、遺伝子・染色体的には、 XXの♀が、外見上・生殖機能上では♂になったり、XYの♂が♀になったりするわけです。 【前提知識2】: 『ESD』:(Environmental Sex Determination)環境依存性決定では、 遺伝子・染色体による性ではなく、ある時期の周囲の環境により性決定がなされ、 性転換『SR』(Sex Reversal)が起こるわけですが、 この性転換『SR』を誘発する要因には、よく知られているものには以下の4つがあげられます。 ◎1)上記の、『TSD』(Temperature Sex Determination ):温度依存性決定。 この温度が影響して性決定がなされる重要な発生段階は種によって異なります。 つまり、発生上のいつの温度が重要なのかが、生物群によって、多少、異なるのです。 ★ 両生類でも、実験上では、『TSD』(Temperature Sex Determination ):温度依存性決定による、 性転換は古くから報告されています。それらの実験結果では、多くの場合、幼生(オタマジャクシ)が 変態する頃の水温が、高温だと♀が♂になるのです。 ただし、この性決定を左右する発生段階(=『性決定を左右する温度への感受性に重要な時期』)が、 種によって(例えば、アカガエルの場合と、ヒキガエルの場合では)、大きく異なります。 ◎2)性ホルモンや、それに類似した化学物質=環境ホルモン、にさらされた場合。 20年位前に、「♀化する自然:水中への[人為的な環境ホルモンの拡散]による」といった内容が盛んに 取り上げられました。魚類などの、特に水生の脊椎動物では、人為的に水中に拡散された [性ホルモンと構造上類似した化学物質]に長期間さらされると、性転換してしまいます。 実験上でも、♀の魚類や両生類等に雄性ホルモンや類似構造の化学物質を投与すれば、遺伝子的・ 染色体的には♀の個体が♂に性転換します。 逆に、雌性ホルモンや類似化学物質を♂に投与すれば♀に性転換するのです。 ◎3)性ホルモンや類似した物質以外の、ある一部の化学物質が性転換を誘発させます。 詳細は省略。 ◎4)周囲の個体群関係に因っての誘発。 魚類ではよく知られていますが、ある個体群で大型の個体が♂になり、その♂が死ぬと、 次に大型の個体が♂になるといったような類の要因。 【前提知識3】: 野外の自然状態で両生類が、『TSD』(Temperature Sex Determination): 温度依存性決定で、性転換していることは、通常は考えにくい。 なぜならば、両生類の『TSD』(Temperature Sex Determination ): 温度依存性決定は、一部の種で、 実験上、著しく、変態する頃の水温設定を変えた場合の話です。通常、野外では、水温が高ければ、 幼生: オタマジャクシの発生の進行は促進され; 一方、低ければ抑制され、結果、変態する時期の 水温はほぼ不変です; 変わる・ずれるのは、温度ではなく、その変態の時期なのです。 つまり、『TSD』(Temperature Sex Determination ):温度依存性決定の重要な時期である、変態する 頃の温度は、野外では、著しく変動はしないのです。実験上では変えられますが。 【前提知識4】: 環境ホルモン:性ホルモン類似化学物質は、人間の生活域周辺の水域では、何らかの 人為的要因により拡散されていることもあるでしょうが、人里から離れた地域では、基本、性転換を 誘発するような、環境ホルモンの被ばく・拡散などは考えられないのです。 |
◎ ナガレタゴガエルの場合、前述の様に、『GSD』(Genetic Sex Determination):遺伝子的性決定 のみならず、明らかに、『ESD』(Environmental Sex Determination):環境依存性決定も作用して、 性決定がなされているために、真の個体群性比が顕著に♂バイアス(♂が♀よりも圧倒的に多い)に なり、かつ、性比が顕著に年変動している。 = 何らかの野外の環境要因で、性転換『SR』(Sex Reversal)が起こっているのであり、 その性決定要因も、年変動しているはずである。。 ◎ そして、この要因は、前提知識3・4に述べた様に、@.『TSD』(Temperature Sex Determination ): 温度依存性決定、の要因である[変態時の温度]とは考えられません・考えられませんでした。 ⇒ なぜなら、変態時の水温が顕著に年変動するはずもなく(変動するのは変態する月日のはず)、 また仮にそうであったなら、他のアカガエル等も性転換してなくてはおかしいからです。 A.実験上コントロールしてもいない野外の、ましてや山間部では、環境ホルモン等の人為的な 化学物質の拡散・被ばくも、考えられません。 ◎ この要因がわからず、調査研究開始から26年間、頭を悩まし、野外調査を終われなかったのです。 性比決定・性転換の要因がわかるまでは、毎年、「最低限、冬眠期の捕獲調査は実施し、 真の個体群性比のデータだけはとり続けないと、かつ、解明のヒントになるかもしれない、 産卵期の水温・産卵ピーク日のデータだけは取り続けないとと」と思い調査を継続していたのです。 ◎ 調査開始から10-15年目頃までは、『TSD』が主因で、『幼生:オタマジャクシが変態する直前頃の 水温によって性転換が生じるのだろう?』と、勝手に推測し自分自身を納得させていました。 けれども、上述のように、自然状態の野外での『TSD』は考えにくく(=各年度の気候により、変態期に 年変動するのは、【水温】ではなく【変態時期】のはずだから & 他のアカガエル等にも同じ現象が 起こらないと不自然だから)、更には仮に『TSD』が生じていても、この要因だけで、ナガレタゴガエル 個体群の顕著な性比の偏りが付くほどには影響しえないことがわかり悩み続けたのです。 ◎ 何が要因で、性転換しているのか? & なぜ3:1⇒1:1へと 大きな揺り戻しが可能なのか? そして2016年度:26年目にやっと『ナガレタゴガエルの性転換・性決定の要因』がわかったのです。 すなわち、まず25年目にして「ナガレタゴガエルにだけ生じるある特殊な要因」に気づき、 次に、昔のある1本の論文(私の知る限り)中の記載で、「その特殊な要因が、遺伝子的♀を 生殖的・表現的♂に転換させる」ということがあったのを思い出したのです(※この論文のことは、 私自身、15年前には知っていたのですが、この要因が影響する主要内容は、[生存率(低下)] であり、 性転換ではないため、私自身、頭から忘れ去られていたのです)。 ◎ そして、26年目にして、「このナガレタゴガエルだけに生じるある特殊な要因の年変動」と 「その3年後の個体群性比」がみごとに一致ていたことに、気が付いたのです。 (※ 3年後の理由は、性成熟年齢の意味:平均、生誕3年後に繁殖活動に参加するため、生誕時の 胚・幼生の性比(遺伝的性比では無い)が、成体の性比として現れるのは3年後だから。 ⇒ 個体群の成体の過半数は、3年目の個体であるから。つまり、生誕年の性比が、個体群の成体の 性比として現れるのは3年後なんです。 ◎ まだ、この「性転換の要因」&「性比が3:1から1:1へと大きく揺り戻しが起こるしくみ」 については、ここで公表できません。少なくとも言えるのは、「温度:幼生〜変態時の水温」や 「環境ホルモン的な化学物質」等の前提知識にあげた要因ではありません。 特徴的なのは、『野外の自然状態で、この要因が生じるのは、現在までに知られている世界の 両生類では、ナガレタゴガエルだけ』なのです。 ◎ ようやく、ナガレタゴガエルの、世界の両生類で唯一の特徴@ABCが、解明・証明できる 目途が立ちました。 特に、自分が生きているうちには不可能だろうと考えていた: 『B:性転換&性比の極端な年変動の理由・しくみ』の解明に目途がたち、これで死んでもいい、 と思えるくらい安堵しました。 もちろん@ABCをきちんと論文にしないといけませんが。 |
★ ナガレタゴガエルは、長距離、渓流魚の様に水中・水底を遊泳し回帰移動します。
これも、世界のカエルでは、ナガレタゴガエルだけの特徴なのです。 ※ 有尾類:サンショウウオの仲間では、種の特徴として、ナガレタゴガエルの様に、長距離の 水底回帰移動する種は、数種で良く知られていますが…(日本のオオサンショウウオも)。 ◎ 昔から、「欧米等にも、同じような回帰移動するカエルがいるのではないか?」、 また、「秋に抱接開始するカエルも 欧米等の大陸にもいるのではないか?」と思っていたものです。 常々、研究するにあたっては、「もう誰かが研究している・公表している・解明しているのでは?」; 「もう誰かが発見しているのでは?」;「他の地域にも似た種はいるのでは?」といった姿勢・心構えで いないといけないと言われますし、私も常々そう自戒しています。 しかし、これまで多くの文献を読んだり、多くの欧米の研究者とのやりとりから、ナガレタゴガエルの 特徴のABC[抱接時期・抱接継続期間(⇔超難産)・性転換]はもちろん、@[水底長距離回帰移動] についても、私の当初からの予想通り、世界でナガレタゴガエルだけであると確信しました。 例えば、昨年、あるアメリカの研究者は、「北米大陸には、ナガレタゴガエルの様な水中を魚類の様に、 長距離回帰移動するカエルはいない。とても興味深い・・・。」と書いてきました。※ ただし、北米の 尾ガエル(交尾ガエル)は、山間部の源流域に生息し、多少は、水中を回帰移動します。 また一方、ヨーロッパの一部の地域では、山間部のアカガエル(=日本のヤマアカガエルの近縁種) & 山間部のヒキガエル(=日本のヒキガエルの近縁種)が、早春、冬眠場所から産卵場所へと移動 する時、沢・川を長距離移動するという報告が複数あります。例えば、ブルガリアの有る地方で。 けれども、これら2種の場合は、「地域的な特徴であり、これらのアカガエルやヒキガエルは、種の 特徴として、川を長距離移動するわけではない」&「長距離水中移動するのは、冬眠明け後の産卵期 のみ」&「ナガレタゴガエルのように、一貫して水底の移動で、息継ぎに上がらないようなタイプなどで もありません」。 ★ ナガレタゴガエルが、一部の水中移動タイプのカエルと決定的に違うのは、 「種の特徴として、山間部水源部から、長距離、水底移動をし、かつ、息継ぎのために水面に上がら ない、一貫した水底移動」&「【秋】&【冬眠明け後の冬】の2期に渡り、長距離移動(秋の方が 圧倒的に長距離です)」することです。 ★ 過去約20年度:総計14万匹以上捕獲 & 約 1万3000匹の再捕獲データからの、 秋・冬の移動距離・特徴、等に関しては、まだ記載しません。 |
★ ナガレタゴガエルは、約半年に渡る水中生活期(10月下旬〜4月下旬)には、ずっと息継ぎをせず、
ほぼ皮膚呼吸のみで、水底生活をします。このことを可能にしているのは、外部形態を大きく変化させ 皮膚呼吸を著しく促進させている点です。水中生活期の特に11月中旬頃〜4月上旬頃の間には、 【皮膚を顕著に伸張させることによって、表皮の表面積を拡大させて】 & 【体を平たくして】、 表皮から体全体に、水中の酸素を取り込めるようにして、皮膚呼吸のみで生活しているのです。 ※ 当然ながら、水かきも、水中生活期には大きく・広くなり、陸上生活期には小さくなりますよ。 ⇒ 「水かきは、1年中、メチャ広いまま」と誤解している人が多いのですが…。 ◎ このように、外部形態を変化させて、皮膚呼吸の促進による・水中での低酸素環境への適応により、 長期間の水中・水底生活を可能にしているカエルが、ナガレタゴガエル以外にも、世界には下記の 3種類ほどで、よく知られています。 [1]. 1種が、ナガレタゴガエルと適応様式が、ほぼ同じ、南米のチチカカ湖、及び、その周辺に生息する 『チチカカミズガエル』 (Telmatobius culeus )です。このカエルは、ナガレタゴガエルの水中生活期の 姿と同様に、皮膚が、1年中、ダブダブにしわになっています。このため、ある書には、気の毒に、 「世界で最も醜いカエル」と呼称されるほどです。冬に皮膚がビロビロになったナガレタゴガエルも、 人によっては超醜いカエルかもしれませんが?。チチカカガエルは、このだぶついた皮膚のおかげで、 ほぼ皮膚呼吸だけで、水底生活するのです。そして、酸素濃度が低い時には、故意に意識的に、 だぶついた皮膚を bobbing:上下に動かして=魚がエラ呼吸をするときの様に、エラをパクパクさせる ようにして、皮膚に水中の酸素を取り込むのです。 ⇒ なお、ナガレタゴガエルの場合は、源流域の流れの速い流水域のため、常に、新鮮な流水から 酸素を得られるので、チチカカガエルのような bobbing は、元々、必要無いのです。けれども、 チチカカガエルの場合は、止水域 or 弱い流水域に生息するため、時には、 bobbing して、水を かくはんし・新鮮な水からの酸素吸収が必要なのです。 [2]. もう1種が、ボルネオ島の、世界で唯一、"肺の無い" カエル (Barbourula kalimantanensis ) です。 このカエルはボルネオ島(=カリマンタン島)の流れの速い渓流に生息し、皮膚呼吸のみで生活して います。体が、ぺちゃんこで、体全体の皮膚から水中の酸素を取り込んでいるのです。 [3]. もう1種が、中央アフリカの渓流域に生息する 『African hairy frog (毛ガエル)』 or 『Claw frog』 (Trichobatrachus robustus )です。このカエルは、下記の2つの独特な外部形態で有名な種です。 @.下肢の太ももの部分に、多数の密集した毛状のビラビラが付いていること(⇒表皮が変化したもの); A.指先の骨が鋭いカギ爪状になっていること。 この下肢の毛状の表皮は♂のみに有り、皮膚呼吸の促進に役立っていると推測されています。 この理由は、♂は繁殖期に水中に長期間、留まるのですが、♀は水中に留まるのがごく短期間なため、 不必要と推測されています。 ◎ これら[1],[2],[3]や[ナガレタゴガエル]において、皮膚呼吸の促進のためにしている外部形態変化は: A.「皮膚を顕著に伸張させて皮膚の表面積を拡大」⇒ [1],[3]&[ナガレタゴガエル] B.「体をなるべく平べったくする」⇒ [2]&[ナガレタゴガエル] これら「皮膚の伸張」「体の扁平化」により、効率良く、水中の酸素を、表皮の毛細血管からのみで、 体全体の血管に酸素を取り込み、皮膚呼吸のみで生活しているのです。 ナガレタゴガエルが、「皮膚を伸張しビロビロにしていること」&「体を扁平に木の葉の様していること」 は、こういう理由なのです。 ※ 地方によって、ずっと昔から、ナガレタゴガエルが、『ビロビロガエル』『木の葉ガエル』と 呼称されているのは、とても的を得ているのです。 ◎ また一方、【流水地】には、「止水域よりも酸素が豊富」という大きな利点があり、 [肺無しガエル]や[ナガレタゴガエル] が渓流水中に生息しているのは、皮膚呼吸の促進の点において、 とても理にかなっているのです。 ◎ 更には、【流水地】には、「止水域よりもはるかに凍結しにくい」という大きな利点もあり、 [ナガレタゴガエル]が、【流水地冬眠(非休眠)】は、とても理にかなっているのです。 ◆ ちなみに、 「1年中、息継ぎせずに、水中・水底生活している」のは、[1]の[チチカカガエル]だけです。 [ナガレタゴガエル]は、半年は陸上生活ですし、[2]の[肺無しガエル]は、ずっと水底生活というよりは、 浅い流水地の岩盤での生活です。また、[3]の[毛ガエル]にいたっては、♂のみが、繁殖期にのみ 水中生活するカエルなので。 ★ 一方、北米や北欧など寒冷地では、数種のアカガエルの仲間は、半年ないし・それ以上もの間、 水底で休眠冬眠します。特に、北米のあるアカガエルは、毎年、半年以上:9か月間前後も[止水]の水底で 休眠冬眠するという報告が古くからあります。 ⇒ これらのアカガエルの種も、見方によっては、半年〜9ヶ月前後も、息継ぎに上がらず水底生活して いる種ともとれますが、あくまで、これらは、完全休眠状態(=極限まで代謝を低下させている)で 息継ぎに上がらないので、区別しています。 ちなみに、これらの種が、もしも、ナガレタゴガエルの様に、非休眠冬眠で(多少、活動的な状態)、 代謝が高い状態なら、必ず、息継ぎに上がらないと、低酸素のため死亡してしまいます。 ナガレタゴガエルは、[皮膚を極端に伸張させていること]&[流水地]だからこそ、 「長期間の息継ぎ無し非休眠冬眠」が可能なのです。 ★ なお、カエルの冬眠の特徴については、◆→【4.多くの人が誤解している点:4B】参照 |
(1).本州の新潟・群馬・栃木〜山口県のほぼ全水系に生息 追記
= 信濃川水系・利根川水系〜山口県までの各水系に生息。
★ 標高的には、現時点では、狭義 (=繁殖が確認されている)には、300−1600m;
広義 (=夏の活動域&分散移動していると推測される)には、200−2000m位の地域に生息。 ⇒ 勝手な推測で標高1000mまでの低山地に生息、等々、標高や生息地域を記述していますが、大間違い! ⇒ 山梨(富士川水系)・長野県(信濃川水系)では、随分と前に、標高1500m以上の沢で繁殖確認されています。 ★ 重要なのは、標高よりも、沢の定義(自然地理学的・河川学的・動物行動学的に)なのです。 [1]. ⇒ 現在の所、低気温・低水温のため、東北地方:阿賀野川・阿武隈川水系、以北では、繁殖できないと推測される。 もちろん、地球温暖化に伴い、東北地方にも分散移動し、[継続的な生息]が可能になっていく可能性があります。 ※ おそらく、現時点でも、分散移動個体としては、東北地方:阿賀野川・阿武隈川水系に移動しているはずで、 定着しているか?=その地で繁殖しているか?、どうかが微妙。 ただ単に、東北地方では、詳しく調査されていないのです。ナガレタゴガエルもタゴガエルも。 ★ 重要なのは、仮に、ナガレタゴガエルが、東北地方の山間部でも繁殖しているとするならば、産卵は4月となり、 そうなると、生誕1年目の成長がとても遅くなり、そのことで、繁殖不可能となるのでは、と思っています。 通常、3月末位までに産卵できる地方にしか、現状、生息・繁殖は不可能と思います。
もう少していねいに言うと:桜(ソメイヨシノ)の開花は、九州〜新潟・栃木・群馬で見ると:大きく・長く見ても、 平年で3月20日〜4月10日位なもの:長くて3週間位なものです。 ナガレタゴガエルの繁殖・産卵行動誘発の日最高水温5℃前後を、平年の各地の気象データから推定すると、 およそ、平年で2月20日〜3月20日に収まるのです。 もちろん、湧水温が高く特別に暖かい流域では、毎年、1月末から開始しています。 ★ 地史上、四国・九州地方;千葉県には生息していない様子であるが、…。 ※ 九州(or 四国にも)には、生息していてもおかしくない、と思われる理由もあるのです…。
[2]. ナガレタゴガエルの場合、行動生態の特性上、「生息地は、都府県や地方ではなく、『水系』での表記が適切」。 例:多摩川水系 ⇔ 上流は、東京都&山梨県; 相模川水系 ⇔ 上流は、神奈川県&山梨県。 … ⇒ 「渓流魚の様に移動」、かつ、「容易に尾根越えする」 のですから、1つの支流に生息しているならば、 極端な人為的な影響がない限り、基本、同じ水系の・他の全支流にも生息しているはずなのです。 例:鬼怒川水系の上流の沢に生息しているならば、必然的に、利根川水系全支流の上流に生息しているはず。 例:秋川上流に生息しているなら、多摩川水系全支流:大丹波川・日原川・小菅川・等々、全てに生息のはず。 実際、ずっと以前に、利根川・荒川・多摩川・相模川・富士川、等々、全ての水系の上流域の全支流(支沢)で 生息していることが確認されています。 信濃川水系や那珂川水系・木曽川水系、・・・等々でも。 [3]. 信濃川・利根川(=新潟・群馬・栃木)〜山口県の水系の「低山地の源流域」を中心に生息。 ⇒ この「低山地の生息流域」には、きちんとした定義(自然地理学的・河川学的・動物行動学的に)が ありますが、未公表の重要事項(20数年の調査で判明)なので、ここでは、まだ公表を差し控えます。 @. ごくおおざっぱに言えば、「ヤマメ(orアマゴ)や沢ガニの生息地と半分ダブり、これらの上流・源流」です。 ◎ 「ヤマメ(orアマゴ)や沢ガニが、日本の特定の限られた川・沢にしか生息しない」などと推測しますか? 『一般の人』でさえもしませんよね? する人は、失礼ながら、頭がおかしいです。 同様に、「ナガレタゴガエルが、特定の水系・沢、特定の地域・都府県にしか生息しない」 などと、 考える『動物生態に関する研究者:草野・松井氏らの様な』がいるならば、なおさら、頭がいかれてます。 ◎ 同様に、「ヒキガエル・アマガエル・ダルマガエル群(ダルマガエル・トノサマガエル・トウキョウダルマガエル)・カジカガエル・ タゴガエル、等が特定の地方の水域にしか繁殖していない」 と考えますか? しないですよね。ほぼほぼ、本州全域にいますから。 A. 皆、どの種のカエルにしろ、ヤマメ・沢ガニにしろ、長い年月をかけて、生息地を拡大させてきたのです。 そして、これらは、適した水場がある所へと分散移動し; ナガレタゴガエルならば、水中水底移動 & 尾根越えをして生息地を拡大してきたのです。 B. 「生息地・生息流域が、大きく分断・孤立し、特定の水系にしか生息していない」、と考える方がおかしいのです。 もしも、生息流域が、大きく分断・孤立している=生態的・生殖的に隔離しているならば、遺伝子的に異なる 亜種レベルで種分化しているはずです。 ヤマメや沢ガニも、ナガレタゴガエルやカワネズミも、「生息している沢・水系」を探すのは容易ですが、 「生息していない水系」;「生息していないと断定できる水系」を探すのが困難なのです。 C. これまでも、現在も、多くの地方で、単に、「生息しているかどうかを調査していないだけ」のこと or 「さほど専門を有しない人が、専門家気取りで、うわべだけの調査をしただけ」のことです。 ★ 実際、ある程度の有識者のいる地域、関東周辺などの場合、利根川水系(栃木・群馬県);荒川水系(埼玉県); 多摩川水系(東京都・山梨県);相模川水系(神奈川・山梨県);富士川水系(山梨県)、等々では、古くから調査され、 「全ての水系の、ほぼ全ての沢」 でナガレタゴの生息が確認されています。 D. 日本には両生類の研究者が、ほぼほぼ0人なため、多くの地方では、真面目な・正しい確認調査が なされず、生息状況が、あいまいだっただけ。 ★ が、2000年以降、岡山県;島根県;山口県等:山陰・山陽地方でも、確認されました。 山口県を始め、中国地方全域に生息していて当然であり、いない方がおかしいのです。 ★ 生息していないことを証明する方が、はるか・はるかに、難しいですから。 つまり、多くの沢に生息しているのに、一般には認知されていないだけのことです。 そして、多くの山間部の人によっては、カエルの種類になど、ほとんど関心が無いだけのこと。
★ この点は、複数の確固たる、科学的根拠があります。現時点で明かして良いと思える内容のみ記述します。 下記の[1]−[3]の内の、特に[3]の理由から、誰しもが、納得するでしょう。 [1]. 調査地:小坂志沢水系・矢沢水系 (矢沢・軍刀利沢・熊倉沢) の莫大な個体数 [個体群密度]からの推定 ★@.私の20数年の調査から、調査地の生息流域:小坂志水系(約12km強)・矢沢水系(7,8kmほど)における、 個体数(個体群密度)は、興味深いことに、両沢とも、ほぼ同じで、約[1万匹/沢の流域1千m] です。 しかも、両沢ともに、「沢の数kmに渡って、ほぼ同じ個体群密度」 & 「年度変化は、ほぼ無く、毎年同じ」 です。 すなわち、成体だけで、秋川水系のたった小坂志沢水系だけで10数万匹・矢沢水系だけで5-8万匹生息。 ※⇒ ゆえに、私が調査で、1シーズンで1万匹捕獲するなど、簡単なことなんです。 ★A.私にとって、「大きく離れた2つの沢にもかかわらず、長距離に渡り個体群密度が同じだった」ことは、 「意外」でもあり、かつ、「やっぱりな」という思いでした。 私は当初、下記の相反する2つのこと:a・bを想定していました。 a.「小坂志川水系や矢沢水系ほど離れた沢ならば、生息個体数(個体群密度)には、明らかに差があるだろう」 と推測していた反面、 b.「他の多くの動物種も、ほぼ同じ環境ならば、地域ごとに個体群密度に大きな差があるものでは無い」 という観点 & 「ナガレタゴガエルが、渓流魚の様な移動行動をしている」という特徴から、 「秋川流域や奥多摩等全域の沢において、ナガレタゴの[個体群密度]に大きな差は無い方が自然のはず」、 という推測もしていました。 そして、この後者の推測:bが当たっていたのです。 ⇒ 例えば、自然状態では、多くの流域で、渓流魚:ヤマメ・アマゴの個体群密度は、さほど大きく違わない; 同様に、多くの昆虫類の種等でも、地域が異なっても同じ様な自然環境(=気候に大きな差が無く、 天敵や食物に差が無く、人為的な影響の差も無い)ならば、さほど個体群密度は異なりませんから。 ★B.つまり、「ほぼ同じ環境(気候・植生・天敵・食物、等に差が無い)ならば、異なる地域でも、 生息できる数(個体群密度)= Capacity は変わらないはず」なのです。 ★ すなわち、「『ナガレタゴガエルの個体数(個体群密度)』も、生息環境に大きな差が無いならば、 他のどこの沢(秋川水系はもちろん、多摩川水系、他)でも、私の調査地と大きく変わるわけがない」のです。 ★C.そして、[小坂志沢] & [矢沢] は、[秋川] の上流部の支流: [南秋川] の支流(枝沢)の1つです。 更に、秋川は、多摩川の支流 [浅川・秋川・平井川・日原川・小菅川・丹波川…、等々] の1つです。 すなわち、 [小坂志沢] や [矢沢] は、多摩川水系の上流部の沢の1/50〜1/100程度にしか過ぎません。 ⇒ かようなわけで、小坂志川・矢沢水系におけるナガレタゴガエルの個体群密度から、多摩川水系全体では、 成体だけで、相当に少なく見積もっても、生息数は100-500万匹位でしょうか。 ナガレタゴガエルの生息個体数の規模が、とてつもない規模であることがわかるでしょう。もちろん、 利根川・荒川・相模川・富士川、等々、全ての水系の上流域で生息していることは確認されています。 ★ また一方、小坂志川や矢沢水系におけるナガレタゴガエルの個体数(10万匹強&5−8万匹ほど)は、 同水系に生息しているアズマヒキガエル・モリアオガエル・カジカガエル・タゴガエル・ヤマアカガエルの、 数百倍〜1000倍です。あまり知られていませんが、どの沢にも、この6種は、基本、生息していますよ! もう、何も言わずとも・書かなくとも、おわかりですよね? ナガレタゴの生息数の規模がどれほどのものか。
◆◆ 他種のカエルと比較にならない程、『広範囲に、かつ、莫大な数が生息できる』明瞭な・決定的な理由は、 下記[2].[3]です。いずれ、公表・更新します。 ◎ 単に、両生類の生態研究者が、限りなく0に近い程少ないため、多くの本・図鑑に記述されているカエルの 生態面の内容は、ナガレタゴに限らず、調査研究などされずに、都合の良い推測で書かれているだけですから! ナガレタゴの行動生態の研究をしているのは、私だけだから。そして、日本に、両生類生態のいわゆる 研究者(国際誌等にきちんと研究論文を書いている人)は、数人 & 2000年以前は、たった1人:倉本先生だけ。 ◎ そして、研究者がほぼ0で、かつ、虚偽内容を報告するいかさま大学教員が多いのみならず、 ナガレタゴガエルの 「鳴き声が聞こえず目立たない」 & 「人間の生活域と完全に離れている」 ために、 「はるか大昔から、山間部の住民には当たり前に認知されていた」 & 「桁違いな生息数」なのに、 一般には、認知されずに経過したのです。 ◆◆【上記: 調査地のナガレタゴガエルの [個体群密度] について】: ★ しかし、2012年度に、ある2つの要因[A・B]の複合作用で、何とそれまでの20%位にまで個体数が激減。 当初、とても、とまどいました。何が起こったのか? 最初は、主調査地の矢沢だけの現象かとも思い、 小坂志川、熊倉沢、等も確認したところ、どこも極端に激減していました。 更には、ヤマアカガエルの方が、もっと極端に激減していることがわかり・・・。 ヤマアカガエルは、私の知る限り(桧原村・青梅市〜飯能市で)、 何と平年の1割近くにまで個体数が減少。
※ [早期繁殖種(≒爆発的繁殖種= explosive breeders)]:冬眠明け後の早春の短期間:数日で繁殖行動をし、 春眠をするタイプ。 日本では、主に、ヒキガエル&茶色のアカガエル群(ヤマアカガエル・ニホンアカガエル・ナガレタゴガエル、等) ※ [継続的繁殖種(= proonged breeders)]:晩春〜夏に割と長期間に渡り繁殖行動をするタイプ。 一部の種は、年に2回、別の時期に繁殖する(例:晩春&夏⇒♀の生殖成熟が年に2回ある)。 日本では、アマガエル・アオガエルの仲間 & 緑色のアカガエル群(ダルマガエル群)等。 ★ 3年後に、2012年度頃に大激減を起こした要因=[A・B]の複合作用&そのメカニズムが、やっとわかりました。 その後、徐々に回復し2016年2月には50%ほどに回復したのですが…; 何と2017年2月の産卵期(すなわち、2016年度)には、再び、別のある2つの要因[C・D]の複合作用で、 前年の半分弱=以前の20%位に迄、激減しました。 この2つの要因[C・D]の複合作用も、ヤマアカガエルの方に、強く影響しました。 そして、2018年2月(=「NHKのダーウィンが来た」の連中が大挙してやってきて撮影した時)には30-40%に回復。 おそらく、今後、異常な事が無ければ、5-10年後位には、2007年以前位に回復するのでは?。 ★ また、小坂志川では、大規模な森林伐採・林道造成が1998年〜続いている影響から、上記の様な生息数が 確認されたのは、2007年まで; 厳密には1999年までなのです。 ★ ゆえに、上記の個体群密度は、小坂志川で2007年(or1999年)以前・矢沢では2011年以前の話ですが。 ★ 注意!単純に、[森林伐採]・[林道造成]・[堰堤造成]・[大型の台風による複数の土砂崩れ]・[大雪]・程度の 要因では、さほど個体数に影響などしませんよ! もちろん、沢の局所的な流域における、個体数の明瞭な減少にはなりますけど。個体群全体に対しては、 これらの要因では、さほど影響などしませんから! 今は、まだ上記のA・B・C・Dの詳細は明かせません。とても重要なので。普通は推測不可能。 ★ 2012 & 2016年度の [カエルの個体数の異常な減少] は、[継続的繁殖種] には影響していないはずです。 ⇒ A・B;C・Dの影響が生じるのは、[早期繁殖種] の特性に関係するからなんです。 [2]. ★ 工事中: [3]. ★ 工事中: ★ 過去約20年度:総計14万匹以上捕獲 & 約 1万3000匹の再捕獲データからの調査流域の、 『個体群密度』・『流域全体での推定生息個体数(成体のみ)』・『個体数(個体群密度)の年変動』、 等々の具体的な値・統計解析値、等については、まだ記載しません。 |
(1).繁殖活動(行動)期間:【Breeding period】:11月初め〜3月中旬(平均的な流域);
<1>.♂の抱接行動期間: 【Pairing period (Amlexing period)】: 11月初め〜3月下旬頃 <2>.♀の産卵移動行動期間:【Spawning migration period】: 2月上旬〜3月中旬(平均的な流域) ※ 寒冷地・低水温流域では、平年で、<1>:10月下旬〜4月上旬; <2>:3月上旬〜4月上旬 ※ 暖かい・高水温流域では、平年で、<1>:11月上旬〜2月下旬; <2>:1月下旬〜2月下旬 ★ ただし、平均的な水温の流域では、 正常産卵=正常な発生になる産卵行動期間は、2月上旬〜3月上・中旬頃迄。 ★ 3月中旬以降までに産卵できなかった♀の場合、その後に、一見、正常に産卵したとしても、 その卵は正常に発生しない(卵の過熟:over mature のために)傾向が強い。
★ 一部の♀は4月になっても結局、産卵できずに、♂も抱接解除し、卵を抱えたまま春眠する。
◆→ より詳細は、【4.多くの人が誤解している点:4(3)C】参照
★ 産卵行動の特徴:産卵時刻・産卵場所・産卵数・難産・幼生の特徴、等々については、 ◆→ 【4.多くの人が誤解している点:4(3)D−N】参照
(2).年間の活動期:下記の5期に区分される(生活場所・活動状況・外部形態により)
| [秋の回帰移動期]; [非休眠冬眠期]; [産卵活動・移動期]; [春眠期]; [夏の活動期] 10月中・下旬 〜 12月上旬 〜 2月上旬 〜 3月上・中旬 〜 4月中旬 〜 10月上旬頃 <1>. 秋の冬眠場所≒繁殖活動場所への移動期: 【Autumn migration】: 10月中旬〜12月上旬 ◎ 夏期に [本流の源頭・各枝沢の源頭付近へ移動し生活] & [一部は、繁殖・産卵場所流域の本流 沿いに留まって生活]していた成体は、10月中・下旬頃から、冬眠場所≒繁殖場所へと移動開始。 夏期に本流・枝沢の源頭へと移動して生活していた子ガエルは、秋に移動行動をしない。 ※ 早期繁殖種(=冬〜早春に産卵するタイプのカエル=産卵場所近辺で冬眠するカエル)の場合、 「秋に繁殖地へ移動し冬眠するのは成体で、子ガエルは性成熟するまで秋に移動行動をしない」 という研究報告は、世界で多く報告されている。 @.一度、日最低気温が0−5℃位(少なくとも6℃未満)の寒い日を経験した後の、 最初の降雨日に、移動行動を開始し、沢の水中へ入り、長距離水底を移動する。 (かように、秋の移動行動開始は、『当日の気温の値』には、無関係である) ⇒ 「最初の低温経験日に行動を開始しない」のは、低温すぎるためと推測される。 ⇒ 移動行動開始日は、奥多摩など関東周辺の低山地では、平年で10月下旬頃である。 A.水中へ移動後、降雨日には、水中移動行動がピークとなり、その後、12月上・中旬頃に、 日最高水温が5℃以下になると、移動行動を停止し冬眠(非休眠)に落ち着く。 ⇒ この閾値: 5℃は、[冬眠明け] = [産卵移動行動開始] の誘発水温の閾値と同じ値である。 B.毎年、秋の移動初期の11月上旬に、一部の♂が繁殖行動を開始し、♀に抱接する。 C.1日の行動パターンは、[16-24時] に第1ピーク; [4-8時] に第2ピークとなる、 明瞭な2ピークの夜行性(bimodal nocturnal)、薄暮性(crepuscular)を示す。 ⇒ 1日の行動パターンに影響を与えている要因は、『明るさ』と考えられる。 D.1日の行動パターンに♂♀での有意な差は無い。 E.毎年、秋川流域では11月上旬頃から、一部の個体が外部形態を【陸上生活期】から【水中生活期】 に変化させる。11月下旬 or 12月上旬頃には、全個体が【水中生活期】に変化する。 ⇒ 皮膚を伸張させ & 体色を:赤茶色から♂は灰緑色〜黒緑色;♀は薄い茶褐色〜灰緑色に。 ◆→ より詳細は、【5.文献・資料のFG】参照
<2>. 冬眠期(非休眠): 【non-torpid Hibernation period】: 12月上旬〜2月上旬 ◎ 沢の石の下を中心にじっとして過ごすが、非休眠で常に reactive かつ、時折、活動する。 ◎ 1月下旬頃:冬眠期の終わり頃には、ほとんどの♀は♂に抱接されペアリングを完了する。 ★ 詳細(冬眠場所・冬眠期中の行動、等)については、まだ、記述を控えさせていただきます。 調査初期における概要は、◆【5.文献・資料のB】に記述していますが、その後の調査で多少、 その当時の記述に誤りがあったこともわかっていますし、それ以上に、より多くの詳細な冬眠期の 特徴が判明していますが、まだ明かせません。 <3>. 冬〜早春の産卵移動期: 【Spring (Winter) migration for spawning 】: 2月上旬〜3月中旬 @.およそ、2月以降に、日最高水温5℃以上になると産卵のための移動行動開始。 ※ 湧水温の高い流域では、毎年、1月下旬頃から行動開始。 A.行動開始当日の水温上昇よりも、それまでの【日積算温度の値】が重要。 ◎【日積算温度の値】が十分に満たされない場合: ⇒ 1月中でも降雨後には2・3日、日最高水温は5-8℃になるが、この時期では行動開始しない。 ⇒ 寒い冬で1月中旬〜が極端に低水温の年では、2月上旬に5℃超になっても行動開始しない。 ◎【日積算温度の値】は十分に満たされても、日最高水温が3月位迄ずっと5℃に上昇しない場合: ⇒ 当日の誘発水温は 4.5℃前後にまで下がる。 ◎一方、2007年の様な異常な年:1月中の日最高水温がずっと5℃以上:6-8℃の様な年では、 行動開始の誘発要因は、当日の水温上昇には関係なく、完全に【日積算温度の値】のみに因り、 行動開始日は、どこでも1月下旬であり、行動開始の日の温度=誘発水温は、どこでも、何と、 日最高水温6.5℃ほどであった。 B.行動開始後でも、日最高水温が4℃以下でほぼ停止; 3℃以下で完全中断する。 C.秋川水系では、毎年、2月中・下旬(2/15-28頃)に産卵行動のピーク; 3月上旬にほぼ終結する。 ※ ごく少数のペアは、毎年、3月下旬まで移動行動を継続する⇔難産で産卵できないために。 D.1日の行動パターンは、[16-24時]の1ピーク; [朝の8時頃]に最低を示す。 ◎ [秋の明瞭な2ピークと異なる理由]: 冬の場合、本来、第2ピークとなるはずの朝は、活動に 適する明るさであるが、水温が低すぎることが要因と考えられる。 ◆→ より詳細は、【5.文献・資料のEF】参照
<4>. 春眠期(非休眠): 【Spring torpor period】: 3月中旬〜4月下旬 ◎ およそ、冬眠場所と同所でじっとして過ごす。 ◎ 産卵が難産ゆえに、産卵できずに卵をかかえたまま腹がパンパンで春眠するメスも珍しくない。 ※ 冬・早春に産卵するタイプの両生類:早期繁殖種は、産卵後、しばらくの間、春眠するのが普通です。 ⇔ 餌となる小動物がまだ行動していないから。 ※ また、夏眠する種も多い。 ◎ 毎年、秋川流域では3月下旬 or 4月上旬頃に、外部形態を【陸上生活期】に変化させる ⇒ 皮膚を伸張がおさまり & 体色を♂♀ともに、赤茶色に戻す。 ★ 詳細については、まだ、記述を控えさせていただきます。 調査初期における概要は、◆【5.文献・資料のB】に記述していますが、その後の調査で多少、 その当時の記述に誤りがあったこともわかっていますし、それ以上に、より多くの詳細な春眠期の 特徴が判明していますが、まだ明かせません。 <5>. 夏の活動期: 【Summer active period】: 4月下旬〜10月中旬 ◎ 夏期: 成体は、@.[産卵場所付近の春眠場所流域から、本流の源頭・各枝沢の源頭付近へ移動] & A.[一部は、繁殖・産卵場所流域の本流沿いに留まる]。 一方、5月末〜6月に変態した子ガエルのほとんどは、産卵場所の流域から、本流・枝沢の源頭 へと移動し生活する。 ◎ 1日の行動パターンは、秋の移動期と同じ:[16-24時] に第1ピーク; [4-8時] に第2ピークとなる、 明瞭な2ピークの夜行性(bimodal nocturnal)、薄暮性(crepuscular)と推測される。 ◎ ただし、夏期の[詳細な生息場所;捕食生物[餌];天敵;夏眠(してるはず)]等々は不明である。 ◆→ 【4.多くの人が誤解している点:4(3)@・A&S】参照
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◆→詳細は、【4.多くの人が誤解している点:4(3)D‐K】&【5.文献・資料のBC】参照
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◆→詳細は、【4.多くの人が誤解している点:4(3)L‐O】&【5.文献・資料のBC】参照
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